2013 Fiscal Year Annual Research Report
エジプトの巨石建造物における3D計測データの取得方法と考古学的解釈
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12J40021
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河江 肖剰 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エジプト考古学 / 三次元計測 / 巨石建造物 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)「巨石建造物の工学的3Dデータの取得」:これまでの考古学における3D計測の学術的な研究は、レーザー・スキャニング機器やデジタルカメラなどを用いて、研究者自らが調査現場でデータを取得する方法が取られてきた。しかし、遺跡によっては、学術調査許可を得るのが困難な場所がある。今回、筆者らが研究対象としたクフ王のピラミッドもその内の一つである。クフ王のピラミッドは、エジプトの巨石建造物の代表的な遺跡の一つであり、建造方法を含めた数多くの研究がなされてきた。しかし、その基となる計測データは仮説と比較すると非常に少なく、特に、内部の組積造に関しては、計測データが存在していない。筆者らは、「洞穴」と呼ばれるピラミッド北東の角80メートル上部に存在する空間のテレビ映像を使用する機会を得、“structure from motion” (SfM)技術を適応し、各画像の「特徴点」を検出することで、最終的に3D点群モデルを生成した。 (2)「人文学的解釈(データ解析)」 エジプト古王国時代の第4王朝に造営されたピラミッドの組積造は、現在でも明らかにされていない。この時代のピラミッドは建築水準が高いため、外装石の多くは剥がれているが、ほぼオリジナルの状態のままである。そのため、表面上は石組みが見えるようだが、実際の内部の組積造がどのようになっているのかは分かっていない。積み方は建築方法にも深く関わるが、組積造を知るための計測データはこれまで取られていなかった。しかし、本研究によって、小さな空間ではあるが、ピラミッド内部の石組み構造を示しうる3Dデータと実測図となる線画が生成された。 (3)インターネット上でのデータの公開 3Dデータの提示技術の研究は、関西大学環境都市工学部都市システム学科の安室喜弘准教授とPhotosynthを用いたデータ公開も試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
下記の「今後の研究の推進方策」でも述べているように、7月3日にエジプトでクーデターが起こり、外務省から渡航延期勧告が出たため、平成26年度内に変更したが、日本のテレビ局が撮影した、通称「洞穴」と呼ばれるピラミッド北東の角80メートル上部に存在する空間のテレビ映像(非学術的なデータ)を使用する機会を特別に得ることができ、これを用いて、クフ王が造営した大ピラミッドの構造解明に繋がる研究を行うことができた。この研究は、来年度行う、第五王朝時代のピラミッド建造方法と構造の解明の大きな手掛かりになりうることから、渡航を延期したにも関わらず、当初の計画以上に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、現地調査を8月に予定していたが、7月3日にエジプトでクーデターが起こり、外務省から渡航延期勧告が出たため、平成26年度内に変更した(調査許可の再申請、並びに、人材・機材のスケジューリングのため)。そのため、本年度は3Dデータの新たな取得方法として、既存の映像データ(非学術的なデータ)を用いた「工学的データの取得」と「人文学的解釈」、そして「データ公開」を試み、これを成功させた。
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Research Products
(3 results)