2013 Fiscal Year Annual Research Report
初期浄瑠璃芸論における謡伝書の受容-金春禅鳳系謡伝書との比較を中心に
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12J40191
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田草川 みずき 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員RPD
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Keywords | 人形浄瑠璃 / 能楽 / 義太夫節 / 謡 / 芸論 / 伝書 / 宇治加賀掾 / 金春禅鳳 |
Research Abstract |
2013年度は、計画通りの謡伝書翻刻の蓄積に加え、宇治加賀掾本人による浄瑠璃芸論の実践について、詳細な研究を行った。2012年度に発表した研究論文「新出資料・宇治加賀掾跋『八九杖』と竹翁坐像について」(『楽劇学』第20号、2013年3月)を踏まえ、加賀掾段物集『紫竹集』および『八九杖』で、宇治座の重要な曲とされる十七曲の内容を検討し、加賀掾が自らの理論を実践している具体例を発見、紹介したものである。『八九杖』および竹翁坐像は、宇治加賀掾研究において多大な意義を有する新出資料であり、『八九杖』の内容や加賀掾の他の浄瑠璃芸論との関連などについて、引き続いての研究が急務であった。そこで、2013年12月に行われた、第21回能楽フォーラム「能から浄瑠璃へ―正本・操りの問題を中心に―」での研究発表「謡曲本文の浄瑠璃化について―宇治加賀掾段物集の事例を中心に」では、加賀掾段物集『紫竹集』と『八九杖』(および『九曲巻』)の所収曲、特に従来の研究では殆ど顧みられなかった、謡曲本文をほぼそのまま浄瑠璃化した「松風」「卒都婆小町 全」、さらに能仕立てに構成された「草刈」に着目し、これらの内容を詳細に検討した。 なお、加賀掾の芸論が門弟との密接な関わりの中から生じていったことを踏まえ、上方における芸能者と弟子との関係についての研究も行った。2013年度はその成果として、京都市立芸術大学における研究プロジェクト「京観世の記録化研究会」への参加と、関連展示「京観世岩井家の歴史」の企画・統括、および研究ノート「女流義太夫の資料保存をめぐって―豊竹駒之助関係資料を一例に」(『楽劇学』第21号、2014年3月)の執筆がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新出資料・宇治加賀掾跋『八九杖』および竹翁坐像の紹介という、浄瑠璃芸論を扱う本研究課題に直接寄与する成果を踏まえ、今年度は、加賀縁自身による浄瑠璃芸論の実践を確認・紹介することができた。『八九杖』についての考察の続編など、計画最終年度に向けての成果発表準備も、着実に進展中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の達成のため、あらかじめ1~3の作業を計画している。 1、室町末期から近世初期にかけての、未翻刻能楽・謡伝書の翻刻およびテキストデータ化 2、宇治加賀掾・竹本義太夫による初期浄瑠璃芸論と、データ化した能楽・謡伝書との比較検討 3、上記1・2で得られた結果を踏まえた、竹本義太夫以後の浄瑠璃芸論への影響の精査 計画三年目となる平成二十六年度は、3の「竹本義太夫以後の浄瑠璃芸論への影響の精査」の作業に進む。加賀縁と同じく、門弟との深い関わりの中で生じた、義太夫の後継者・竹本政太夫の芸論に着目し、加賀縁以来の浄瑠璃芸論の推移を確認したい。
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Research Products
(4 results)