2012 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエをモデルとした生殖細胞形成機構の解析
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12J40192
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
羽生 賀津子 (中村 賀津子) 独立行政法人理化学研究所, 生殖系列研究室, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 始原生殖細胞 / 転写抑制 / microRNA / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
ショウジョウバエの生殖細胞は、発生初期に形成される、極細胞と呼ばれる細胞に由来する。極細胞の発生プログラムを制御する因子は、卵形成過程で合成され、卵後極の特殊な細胞質(生殖質)に蓄積し、極細胞へと取り込まれる。本研究では、生殖質を構成する因子の一つであるpolar granule component(pgC)の分子機能解析を進めている。pgcは、形成直後の極細胞での体細胞遺伝子発現抑制に必須の因子である。pgcの機能を欠いた極細胞は、生殖細胞へと分化することなく細胞死を起こすことから、pgcによる転写抑制が極細胞の維持に必須であることがわかっていた。しかし、転写抑制の破綻から、細胞死へと至る分子機序は依然不明である。これまでの研究からpgcの機能を失った極細胞では、生殖質を構成する母性mRNAが不安定化すること、また、複数のmicroRNA(miRNA)が異所的に発現することが明らかとなっていた。そこで、本年度は、主に遺伝学的手法を用いて、極細胞でmiRNAの発現を抑制することが、母性mRNAの安定化と極細胞の発生に重要であるのか検討した。具体的には、miRNA経路関連因子とpgcとの多重変異体を作成して、その表現型の解析を行った。その結果、pgcの機能を失った極細胞でmiRNA経路を抑制すると、一部の極細胞が細胞死を免れ、生殖細胞へと分化することを見いだした。さらに、これらの極細胞では、生殖質を構成する母性mRNAが安定化することを見いだした。これらの結果から、pgcの機能を失った極細胞では、異所的に発現した複数のmiRNAの働きによって、生殖質を構成する母性mRNAが分解されるために、生殖質が不安定化し、極細胞の細胞死が引き起こされると考えられる。以上の知見から、母性mRNAをmiRNAによる分解から保護することが、極細胞の確立過程で重要であることが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の目標は、極細胞の発生過程におけるpgcの機能を明らかにすることである。本年度に得られた研究結果から、pgeの機能を失った極細胞において引き起こされている表現型を、分子レベルで明確にすることができつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の計画である、pgcの分子機能解析については、論文発表を目標に研究を継続する。また、第二の計画として立案している、生殖質形成に関わる新規遺伝子の遺伝学的スクリーニングを開始する。予備的な実験結果から、ショウジョウバエストックセンターで維持されているRNAi系統に対してスクリーニングを行うことが有効であると考えている。
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Research Products
(2 results)