2013 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエをモデルとした生殖細胞形成機構の解析
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12J40192
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
羽生 賀津子 (中村 賀津子) 熊本大学, 発生医学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 生殖細胞 / 生殖質 / 転写抑制 |
Research Abstract |
多くの動物種において、生殖細胞の発生プログラムを指揮する因子は、卵形成過程で合成されて、卵内の特定の領域(生殖質)に蓄積し、生殖細胞へ取り込まれることが知られている。本研究では、ショウジョウバエの生殖質を構成する母性因子の一つであるpgcの分子機能解析を進めている。pgeは、生殖細胞(極細胞)中でのmRNA転写を胚発生初期に一過的に抑制する。前年度までの研究から、pgcによって、極細胞でのmicroRNA (miRNA)の発現が抑えられていること、そして、生殖質を構成する母性mRNAのmiRNA依存的な分解が妨げられていることを見いだしていた。これらの結果をふまえ、本年度は、極細胞の発生過程でmiRNAの発現を抑制することの重要性についてさらに検討を行った。pgcが発現を抑制しているmiRNAの中には、極細胞の確立過程に必須の母性因子であるnanos (nos) mRNAの3'UTR中に予想標的配列を持つものがあった。そこで、これら2種類のmiRNAの発現抑制が極細胞の正常な発生に必要であるのか検討した。miRNAの突然変異体の分与を受け、pgc突然変異体との多重変異体を作製し、多重変異体での極細胞の挙動を調べた。しかし、多重変異体においても、極細胞は機能的な生殖細胞に分化できなかった。この結果から、pgcによって極細胞での転写が抑制されているmiRNAが他にもあると考えられた。そこで、既存のmiRNAデータベースを参照して、nosmRNAの分解に関わる可能性があるmiRNAを選び出し、現在、これらのmiRNAがpgcによる転写抑制を受けているのか調べている。生殖細胞におけるmiRNA経路の抑制は、脊椎動物の初期胚においても報告されており、生殖質を持つ多くの動物種で保存された分子機構であることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初の目標としていた、論文の完成に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
pgCの分子機能解析については、論文発表を目標に研究を継続する。また、生殖質形成に関わる新規遺伝子の遺伝学的スクリーニングを開始する。スクリーニングは、ショウジョウバエストックセンターで維持されているRNAi系統に対して行う計画である。最近の国内外の報告から、卵形成過程初期から遺伝子ノックダウンを行うと、多くの場合において、卵母細胞が形成されなくなるなどの重篤な表現型が観察されることがわかってきた。生殖質形成過程における遺伝子ノックダウンの効果を調べるために、現在、卵形成過程中期以降でRNAiが機能するようなスクリーニング環境を作っている。
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Research Products
(1 results)