2014 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエをモデルとした生殖細胞形成機構の解析
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12J40192
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
羽生ー中村 賀津子 熊本大学, 発生医学研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / 生殖質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエの始原生殖細胞(極細胞)形成過程は、卵形成過程で合成されて卵内の特定の領域(生殖質)に蓄積し、極細胞へと取り込まれる母性因子によって制御される。本研究では、生殖質構成因子の一つであるpgcの分子機能解析を行っている。Pgcは、極細胞におけるmRNAの転写を胚発生初期に一過的に抑制している。本年度は、Pgcによって転写抑制を受ける遺伝子として、胚発生初期に体細胞で発現を開始する複数のマイクロRNA(miRNA)遺伝子を同定した。前年度までの成果と合わせ、Pgcは、複数のmiRNAの発現を極細胞中で抑制し、生殖質を構成する母性mRNAのmiRNA依存的分解を防いでいることが明らかとなった。生殖細胞におけるmiRNA経路の抑制機構は、脊椎動物の初期胚においても報告されており、生殖細胞の特質を維持する機構として普遍的であると予想された。 また、極細胞形成過程を制御する新規生殖質因子を同定するための、遺伝子ノックダウンスクリーニングを開始した。現在までに、極細胞の形成過程を直接制御する生殖質因子は、ごく少数しか単離されていない。その理由として、未同定因子の多くは、卵形成過程初期から生殖系列細胞で機能していることが予想される。このような因子の突然変異体は、卵形成不全を起こし、その機能を欠いた卵を産まないため、従来のスクリーニングから免れてきたと考えられる。このような因子を同定するため、卵形成の初期過程を正常に進行させた後に、卵形成過程中期以降でRNAサイレンシングを誘導する遺伝子ノックダウンスクリーニング系を立ち上げた。そして、予備的スクリーニングを行い、スクリーニングの有効性について評価した。その結果、計画した方法によって、極細胞形成異常を示す系統を単離できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の課題は、Pgcの分子機能解析である。現在までに、Pgcが、複数のmiRNAの転写を極細胞中で抑制していること、そして、生殖質を構成する母性mRNAをmiRNA依存的な分解から保護していることを示した。極細胞の発生過程におけるPgcの生理機能が明らかとなり、成果を取りまとめた論文の作成を進めている。また、第二の課題である、遺伝子ノックダウンスクリーニングによる新規生殖質因子の探索に着手した。予備的スクリーニングの結果、計画した方法によって、極細胞の形成異常を引き起こす系統を単離できることを示した。予備的スクリーニングで単離された系統は、生殖質や極細胞の形成過程に異常が生じることが既に示されている遺伝子のノックダウン系統であったが、今後、スクリーニング対象とする系統数を増やすことで、新規因子の同定も期待できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
始原生殖細胞(極細胞)形成に関わる新規因子の同定を目的とした、遺伝子ノックダウンスクリーニングを進める。スクリーニングでは、卵形成過程中期以降に生殖系列細胞で発現するGAL4系統を用いて、メスの生殖系列細胞でUAS依存的に短ヘアピンRNA(shRNA)を発現させ、RNAサイレンシングを誘導する。そして、このメスから産まれた胚を回収、固定し、極細胞の挙動を解析する。スクリーニングのバックグラウンドに、生殖質構成因子の一つであるVasaタンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現する系統を用いることで、極細胞の挙動は蛍光顕微鏡下で直接観察する。以上の手順によって、国立遺伝学研究所で維持されているshRNA発現系統を対象に、研究期間内に約500系統を解析する。また、ショウジョウバエ卵形成過程中期以降でのRNAサイレンシングの活性は低いことが知られており、小分子RNAの生合成に必要な酵素であるDicer-1の発現レベルが律速になっていると考えられている。そこで、Dicer-1の共発現により、RNAサイレンシング経路を増強させることを検討する。
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Research Products
(2 results)