2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13021219
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
鈴木 信昭 富山大学, 人文学部, 教授 (50206512)
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Keywords | 朝鮮西学史 / マテオ・リッチ / 朝鮮地図学史 |
Research Abstract |
平成15年度においては、漢訳西学書の中でもマテオ・リッチが中国で著述した『天主實義』や『交友論』に関する研究を行った。その中でも、特に注目したのが、朝鮮に始めて両書が伝来したことを記録する李〓光の『芝峯類説』である。『芝峯類説』は、1614年に刊行された百科全書的類書であるが、既に昨年度の研究で、同書に『坤輿萬國全圖』が始めて朝鮮にもたらされ、そして李〓光自身も閲覧したことを明らかにしている。これまでの諸先学の研究によれば、『芝峯類説』の中に、『坤輿萬國全圖』と同様に、『天主實義』や『交友論』の内容を記す部分があるため、両書も、早い段階から朝鮮に伝わり、実際に李〓光も閲覧したであろうと結論づけていた。 しかし、『芝峯類説』とともに、『天主實義』や『交友論』を子細に分析すると、李〓光は実際に両書は見ていないのではないかと考えられるのである。そのため、今年度は、李〓光が『芝峯類説』を著述するに際して利用した書籍を、同書から抽出し、それら抽出した書籍と『芝峯類説』の記事との比較検討を行った。これまでのところ最終的結論を導き出すにはいたっていないが、推論したごとく、『芝峯類説』の記事の大部分は、中国人によって書かれた書籍の内容をほぼそのまま転載したに過ぎないことが明らかとなった。特に、『天主實義』や『交友論』が記載されている『芝峯類説』巻二、「諸国部」の「外国」の条は、中国の史書、詩文集などをそのまま引用しているだけである。史書の中でも、特に『吾學編』は、李〓光が最も信頼した書籍のようで、「外国」の条の国々の配列は、『吾學編』とほぼ同じであり、さらには国情の説明の際にも、『吾學編』の文章をほぼそのまま転載している。なお、『天主實義』と『交友論』については、次のような点が明らかとなった。『交友論』の内容は、中国の雑書『續耳譚』を援用して書いたものであり、書名も『續耳譚』と同じように、『交友論』とはせずに『重友論』としている。『天主實義』については、未だ結論を見つけるにはいたっていない。最終的には、今年度の研究については、「朝鮮儒学者李〓光の世界地理認識」と題して、発表する予定である。
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