2001 Fiscal Year Annual Research Report
ボルナ病ウイルス感染による神経突起伸張因子の機能阻害と脳成熟への影響
Project/Area Number |
13035027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 神経系 / 持続感染 / 宿主因子 / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
ボルナ病ウイルス(BDV)は、その感染自体では細胞を破壊しない非細胞障害性のウイルスである。また、容易に持続感染を成立させるのもBDVの特徴である。これまでに、BDVの持続感染の成立には、その主要抗原であるヌクレオ蛋白質(p40)とリン酸化蛋白質(p24)の感染細胞内での存在比が重要であることを示してきた。また、BDV持続感染細胞ならびに感染脳内では、p24蛋白質が顕著に蓄積を起こしていることも解明している。そこで、感染細胞内でのp24蛋白質の蓄積が、神経細胞の機能維持に影響を及ぼしている可能性を考え、p24蛋白質と特異的に結合する宿主側因子の同定を行った。その結果、p24蛋白質が脳内の神経突起伸長因子であるアンフォテリンと特異的に結合することを明らかにした。アンフォテリンは、胎生期から成長期の脳で強く発現し、成熟期の中枢神経回路網の形成に重要な役割をしている蛋白質である。また、成熟した脳では、ストレス下においてその発現が増強され、神経細胞の生存維持に関わっていると考えられている。私たちは、アンフォテリンの機能がBDV感染細胞で顕著に阻害されていることを突き止めている。そこで、BDV感染によるアンフォテリンの機能阻害が、脳神経成熟へどのような影響を及ぼしているのかを、(1)p24蛋白質をグリア細胞で発現するトランスジェニックマウスの作成、(2)BDV持続感染新生仔ラットの脳病理学的、生化学的解析、(3)の新生仔ラットへの抗アンフォテリン抗体接種による神経病理学的解析、などの方法を用いて検討を行っている。これまでに、BDV p24トランスジェニックマウスの研究において、脳内でのp24蛋白質の発現のみで神経栄養因子の発現低下を伴うシナプス数の減少が観察され、攻撃性の上昇や学習能力の低下などの神経症状が誘発できるという結果を得ている。
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[Publications] K.Tomonaga, et al.: "Borna disease virus nucleoprotein requires both nuclear localization and export activities for viral nucleocytoplasmic shuttling"J.Virol.. 75. 3404-3412 (2001)
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[Publications] K.Tomonaga, et al.: "Neurological diseases and viral dynamics in the brains of neonatally Borna disease virus-infected gerbils"Virology. 282. 65-76 (2001)
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[Publications] K.Tomonaga, et al.: "Borna disease virus phosphoprotein binds a neurite outgrowth factor, amphoterin/HMG-1"J.Virol.. 75. 8742-8751 (2001)
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[Publications] K.Tomonaga, et al.: "Varied persistent life cycles of Borna disease virus in a human oligodendroglioma cell line"J.Virol.. (In press). (2002)
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[Publications] K.Tomonaga, et al.: "Borna disease virus : Role in neurobehavioral disease"ASM Press (In press). (2002)