Research Abstract |
次世代の情報の高密度化に対応すべくZnOの近紫外励起子レーザ発光デバイス化が有望視されている。本研究では,Si基板上にZnS薄膜をエピタキシャル成長させ,これを酸化することにより高品質ZnOエピタキシャル薄膜を形成するとともに,デバイス化をも目的としている。以下平成15年度研究実績の概要を述べる。 ◇SI(111)基板上Zn_<1-x>Mg_XOエピタキシャル薄膜の形成 ZnS及びMgSを混合しペレット状にしたものを蒸着源として用い,電子ビーム蒸着法にてSi基板上にZn_<1-x>Mg_XSを成長させ,更に,酸素雰囲気中で800℃,数時間酸化を行うことによりZn_<1-x>Mg_XO薄膜を得た。PLスペクトルの測定から,自由励起子発光のピークエネルギーがxの増加,即ち,Mgの割合の増加に従って,x=O.3までは,高エネルギー側へシフトすることが示された。また,分光透過率測定から,薄膜の吸収端もxの増加に従って高エネルギー側へシフトすることが示された。更に,励起子発光強度はx=0.1で最も強く,ピークエネルギーは約3.43eVであった。これに対して,x=0,即ち,ZnOのそれは約3.28eVであった。また,発光強度は熱処理時間の増加に伴って大きくなったのに対して,2.5eV付近の酸素空孔に基づく可視の発光は減少した。以上のことから,本研究の方法により,Zn_<1-x>Mg_XO混晶薄膜が形成されることが示された。 ◇Si(111)基板上ZnOエピタキシャル薄膜の伝導性の制御 前年度においては,AlまちはGaをドーパントとしてn型ZnOエピタキシャル薄膜の形成を行った。ドーピング法としては,ZnSペレットに予めドーパントを添加しておき,蒸着,酸化によりZnO : M(M=Al, Ga)を形成した。形成した薄膜の中では,ZnO : Al(0.1at%)の膜が結晶性,発光特性,電気特性において最も優れており,抵抗率,移動度及びキャリア濃度がそれぞれ5.21Ωcm,6.56cm^2/V・s及び1.83×1017cm^<-3>であるn型のエピタキシャル薄膜が得られた。 今年度はP型ZnO薄膜の形成を目指し,ドーピング法としては,ZnO薄膜上にSbの極薄膜を蒸着後,KrFエキシマーレーザを照射するレーザドーピング法を試みた。現段階ではP型は得られていないが,ドーピングを行わないときのn型の抵抗率がレーザ照射を行うことによって大きくなっていることから,Sbのレーザドーピングにより正孔の生成は行われていると思われるので,レーザドーピング法がp型形成に有効であること,出発点としてのZnO薄膜をできるだけ真性にすることが重要であることが示唆された。
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