2002 Fiscal Year Annual Research Report
相互作用場面における勢力者の対人認知―行動統制がステレオタイプ化に及ぼす影響
Project/Area Number |
13610121
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
村田 光二 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (40190912)
|
Keywords | 行動統制 / ステレオタイプ化 / 対人認知 / 勢力者 / 運命統制 / 相互作用 |
Research Abstract |
本研究の目的は、組織の中で地位の高い人(上司)が、地位の低い人(部下)を認知する際に歪みが生じる問題を、行動統制という要因に着目して実験的に検討することである。これまでの研究では、上司は運命統制という社会的勢力を持つので、部下を所属するカテゴリーに基づいてステレオタイプ的に判断しやすいことが示されている。しかし、上司は同時に行動統制という別のタイプの勢力を持ち、部下の行動を直接左右する。.本研究では、運命統制とは独立して、行動統制もステレオタイプ的判断の生起に影響することを、3つの実験で検証した。 まず実験1では、上司の側に「行動統制」「運命統制」がそれぞれ有る場合と無い場合を操作して(2×2の実験デザイン)、対象人物(部下)の側が示した成績から数学能力をどう認知するかを測定した。その人物の所属する「ある大学の学生は数学能力が低い」と一般には思われているが、これに反して数学パズルの成績が良くなる実験場面を設定した。その結果は予測に反して、どの条件でも良い成績のみを考慮に入れた印象が認められた。そこで成績を少し下げるなど手続を改良して、同じデザインで実験2を実施した。その結果、行動統制がある場合にない場合よりも、数学能力が低く評定されたことが認められた。すなわち、行動統制が運命統制とは独立して、ステレオタイプ化に影響したと考えられる。しかし、「上司が自分の行動に注意を払うならば、部下の個別情報に注意を払ってステレオタイプ化しない」という予測までは検討できなかった。さらに、実験3では同一集団の中で、行動統制を持つか持たないかだけが異なる上司を条件として設け、ステレオタイプに沿うと好成績が期待される部下の低成績から形成された印象が測定された。この結果は現在分析中で、行動統制そのものの効果をより詳しく検討予定である。
|