2001 Fiscal Year Annual Research Report
大卒8年後のキャリア発達に関する縦断研究-時間的展望の再編成に注目して-
Project/Area Number |
13610133
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
白井 利明 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00171033)
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Keywords | 職場適応 / 時間的展望 / キャリア発達 / ライフプランニング / 職業指導 / 縦断研究 / 環境移行 / 成人期 |
Research Abstract |
卒就職者の8年後の職場適応に関するデータを収集するために,大学卒業後8年目の女性8人の調査協力ヘの承諾が得られ,質問紙と面接による調査を行った。質問紙は,郵送法により,卒業後の進路と職場の状況,職務満足,大学生活と大学時代および卒業後1年目および5年目の職業探索行動または職場適応に関する回想,ライフ・プロジェクトの測定を,自由記述を中心に行なった。また,縦断的データを重ねている時間的展望と自我同一性地位の測定,VP1職業興味検査を実施した。面接調査は,予備調査をふまえて,職場適応の実際の行動,その動機と見通しについて明確にするための質問から構成された。面接記録は筆記されると同時に,テープレコーダーで録音され,文章化された。面接時の職業は,小学校教師4人,大学研究者1人,病院技師1人,図書館司書1人で,主婦1人も参考までに調査された。 面接調査の結果から以下のことが示唆された。つまり,(1)20代は卒業、就職、結婚が重要な人生の区切りとなることが予想されたが、結婚それ自体も予期され、かつ生活のスタイルが変わらない場合にはそれほど重要な区切りではなくなること、むしろ職業生活が大きな位置を占め、転勤などで職場環境が大きく変わった場合にはそれが転機となった。(2)30歳になることについては周囲からは別として自分自身はあまり意味がないとしている者が多かった。自分についてはとくに変わっていないとする者が多かった。他方で、大人であるかどうかについても捉え方の個人差が大きかった。(3)将来展望に関しては、未婚の場合はこれまでと同様であるが、結婚しなかった場合も想定した人生が考えられ始めており、既婚の場合は家族を含めた人生展望が考えられ始めていた。以上から、大学卒業後8年後では、職業キャリア経験の体制化とそれに基づく将来展望および家庭生活との具体的連動が形成され始めることが示唆された。
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