2001 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニケーション発達における発話の帰属と著作権および私的所有概念の獲得
Project/Area Number |
13610163
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
斉藤 こずゑ 國學院大學, 文学部, 教授 (70146736)
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Keywords | コミュニケーション発達 / 個人性情報 / 発話の帰属 |
Research Abstract |
コミュニケーション発達においては、個人超越的言語ではなく、発話と個人性情報の関係が、言語所有者としての個人のアイデンティティと深く関わる重要な機能を持つことを仮定し、平成13年度は、発話の特定話者への帰属方略とその発達過程を、以下の1,会話相互作用の行動分析、2,インタビュー・質問紙法、によって調べた。 1,乳幼児および成人に対し、参与者の社会文化的文脈の差異を考慮し、半統制実験場面、自然場面など様々な状況において、会話を収集・観察・分析し、発話の帰属メカニズムを検討した。当初は主に発話の音声聴覚情報のみの分析で可能と予想していたが、発話の個人性情報の付与、およびその解読には、視覚情報が排除出来ない重要な役割を果たすと判断されたため、ビデオ録画資料の微視的分析によって、視聴覚的帰属方略を抽出した。さらに今後、幾つかの方略に絞り、発達的変化をより詳しく検討する予定である。そのために、縦断観察中の保育園のクラスの場面ごとの自然な相互作用を、今回同様に微視分析するほかに、半統制実験を行う。 2、発話の個人性情報と発話の帰属、さらに、各種形態の知的、私的創作物に関する著作権および所有概念、との関係について検討するため、幾つかの質問項目を用意し、年長児と成人で調査した。結果は、仮説に反し、発話の帰属と、後者の権利概念との直接的関係を示すものではなかった。これは後者の権利概念についての質問項目自体によって帰結したことであると反省し、さらに、比較社会歴史文化的視点も考慮した文献研究によって、質問項目の検討を行う予定である。また、2のメタ的知識と、上記1の行動レベルの発話の帰属との乖離の原因を探ること自体が、言語表現の創造とそのcredit、模倣、借用、引用、オリジナリティの喪失、著作権侵害、剽窃など様々な特性を見せる、発話の帰属の本質と関わる重要な今後の課題だと考えられる。
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