2002 Fiscal Year Annual Research Report
タイ北部におけるユーミエン(ヤオ)族の核家族化と祭祀・儀礼知識の変化に関する研究
Project/Area Number |
13610355
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部・第一部・地域研究学科, 教授 (60230786)
|
Keywords | 核家族化 / ユーミエン / ヤオ / 祭司活動 / 祖先祭祀 / 家族の分立サイクル / 父系合同家族 |
Research Abstract |
平成14年度には数か村において、ユーミエンの社会=文化的変化に関する基礎的なデータの収集を行い、核家族化の動向、祭祀活動の概況について主に調査した。今年度は特に、嘗て父系合同家族を形成していた世帯が核家族単位へ分立してきた個別事例(家族歴)を聴取した。そこから明らかになったことは以下の通りである。(1)核家族化は、父系合同家族の分立サイクルが以前に比べて早期化しているこのとの結果であり、この分立サイクルの早期化は、少なくとも40年以上にわたって推移してきたものである。40年前から、換金作物栽培は合同家族内の核家族単位で行われ、自給作物は合同家族全体の共同耕作がおこなわれていたが、十数年前頃から自給作物の耕作単位も核家族に細分化され、最終的に居住の分立自体が早期化した。(2)その一方で居住の分立が儀礼的側面における分立には必ずしもつながらず、儀礼面では親子・兄弟間の統合が維持されている。(1)の家族分立サイクルの早期化は、阿片芥子栽培禁止に伴う換金作物の多様化が大きな要因として作用している。その後の森林伐採禁止令はこの傾向に拍車をかけ、農外就業も増加し、核家族単位の自立性を強化した。(2)に関しては、祖先祭祀を中心とした祭司活動全体が減少しており、合同家族の祖先祭祀儀礼統合体の機能が低下しており、複数家族の緩やかな儀礼的統合に移行している点も指摘される。このように、経済・儀礼の側面で父系合同家族の必要性が減じているため、家族の分立サイクルが早期化していると考えられる。 冬季には儀礼祭司活動の調査を行った。祭司活動全体が縮小している傾向にありながら、経済的に成功した家族・村落では、大がかりな儀礼をより多く行う傾向にあり、儀礼の出費に耐えられない家族・村落との差異が増大している。経済的利得を儀礼に消費するのは、以前から続いている「伝統的」パターンであるが、こうした傾向と核家族化との関連については、来年度以降の調査で明らかにしたい。
|
Research Products
(2 results)