2001 Fiscal Year Annual Research Report
日本海沿岸域における漁民社会の民俗形成と女性の役割
Project/Area Number |
13610365
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
高桑 守 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (60127769)
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Keywords | 日本海沿岸域 / 漁業の地域的特質 / 民俗形成と女性 / 漁民家族誌(史) / 漁民の妻 / 漁民の信仰と俗信 / 漁民社会の経済的・社会的基盤 / ニシン漁 |
Research Abstract |
本研究は日本海沿岸域に立地する4漁村(増毛町-北海道、脇野沢村-東北、鹿磯区-北陸、恵曇区-山陰)を調査対象として、漁民社会における民俗形成に女性、とりわけ漁民の妻がどのように係わり、役割を果してきたのかを実態的に調査し分析することを目的として計画されたものである。具体的な調査内容としては、当該地区における漁業の現況や変遷と共に、それに依存する漁民家族をとりまく経済的・社会的基盤、漁民の信仰や俗信的事象の実態を漁民家族の生活誌(史)を検討することによって、女性とりわけ漁民の妻が、その行動を通して歴史的かつ社会的に地域の民俗形成の過程といかに係わってきたのかを明らかにすることを目的として設定されている。 本年度は3ケ年計画の初年度に該当するため、これらの調査分析を深化させる第一段階として、調査地4漁村すべてにわたり、それぞれの地域における漁業の実態を把握するべく、以下の日程で調査を実施した。・北海道増毛郡増毛町(8月3日〜8月14日)・青森県下北郡脇野沢村(9月10日〜9月15日、12月26日〜12月30日)・石川県鳳至郡門前町鹿磯区(8月17日〜8月26日、11月23日〜11月26日、平成14年1月3日〜1月7日)・島根県八束郡鹿島町恵曇区(8月29日〜9月7日) それぞれの漁村において、日本海海域の生態と対応した特徴的漁業が歴史的に営まれ、それら漁業の地域的特質が、地域の民俗形成に大きな影響を与え、民俗的個性を形作ってきた事情を明かにすることができた。 例えば増毛では、大正期から昭和20年代にかけて、ニシンの建網漁や刺網漁が持続的に行われ、ニシンの網ハズシから加工にいたるまで多くの女性がこの作業に係わる中で、漁家の家計が維持されてきたし、鹿磯区ではイワシ刺網漁や定置網漁が沿岸海域で持続されてきた一方で、漁民の青壮年層を中心に船員出稼ぎが恒常的に存在し、漁民の妻たちは、主婦的役割をになうと同時に副業的に漁農双方に従事してきた。 このような実態を今後、さらに深化させるべく調査・分析をすすめていきたい。
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