2002 Fiscal Year Annual Research Report
ステファヌ・マラルメを中心とする19世紀末メディア空間の変容の研究
Project/Area Number |
13610605
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
兼子 正勝 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (30169578)
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Keywords | マラルメ / 画像データベース / メディア / 印刷 / 視覚性 / 19世紀末 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ステファヌ・マラルメの最晩年の詩作品『賽の一振り』(1897)が、西洋活字文化の歴史においてはじめて文字を「見るべきもの」として扱い、活字の視覚的レイアウトに表現としての価値をあたえたという出来事を、19世紀末の社会・文化的な「メディアシステム」全体の問題として再解釈を試みることにあった。 この目的のために本研究では以下の作業をおこなった。 1)マラルメ文献の再分析により、晩年のテーマがどのように成熟するかを追跡した 2)マラルメの作品資料、同時代の「視覚性」を持った印刷資料、写真や映画など同時代の視覚技術に関係する資料を収集し、画像データベース化した 3)上記2つを時系列的につきあわせて、同時代の活字メディア・視覚メディアの動きとマラルメ自身の思索がどのような相互関係をもっていたかを考察した この結果次のことが理解された。1)19世紀後半のフランス社会には、出版・絵画・写真など諸分野を通じて「視覚性」を求める強い社会的欲望が存在していた。2)マラルメには「視覚性」への志向があったが、1885年以前には意識化されていなかった。3)1885年以後、いわゆる「詩の危機」の時代において、マラルメは古典的詩法の崩壊と、新聞など大衆活字メディアの興隆とに同時に直面することにより、詩の言葉の「視覚性」「物質性」の考察を深めていった。4)つまりマラルメという個人のなかに、個人的志向とメディアシステムの志向が交錯するかたちで、『賽の一振り』どが成立したのではないか。 このような研究成果について、すでに一部を『マラルメ全集第5巻』の編纂・翻訳・注釈に生かし、2002年愛知芸術文化センターにおける講演とリーフレットでも発表したほか、概要を研究成果報告書にまとめるなどの作業をすすめている。また、画像データベースについては、著作権の関係で一般公開するにはいたっていない。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 兼子正勝: "映像という神秘と快楽"映像学. 66. 128-133 (2001)
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[Publications] 兼子正勝: "映像の黄昏-ピエール・クロソウスキー追悼"すばる. 23-10. 154-157 (2001)
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[Publications] 兼子正勝: "ストローブ=ユイレとマラルメ-見えないものを見る"ストローブ=ユイレ・レトロスペクティブ. 1. 1-2 (2002)
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[Publications] 兼子正勝: "映像とその<外>"東横学園女子短期大学女性文化研究所. 19. 14-15 (2002)
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[Publications] 菅野昭正, 兼子正勝ほか訳: "マラルメ全集第5巻"筑摩書房. 1000 (2001)