2003 Fiscal Year Annual Research Report
日独語のフィクションに現れるダイクシスの言語学的対照研究
Project/Area Number |
13610624
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 伸治 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (90201186)
|
Keywords | ドイツ語学 / 日本語学 / ダイクシス / 引用節 |
Research Abstract |
今年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 ダイクシス表現は、「わたし」、「ここ」などのように、指示表現の下位分類であるダイクシス表現、あるいは、「来る」などのように指示表現ではないがその使用条件に話し手、発話時などが関連する語彙などが挙げられるのが一般的である。これに対し、本研究は、ダイクシス表現をきわめて広範囲に取り、語り手の視点、登場人物の視点という二つの基準点が何らかの形で関与する要素を考察対象としている。また、フィクションにおいて問題になる語り手の視点、登場人物の視点は、会話文においては原話者の視点、引用者の視点として問題になるが、本年度はこの観点からの考察をまとめ、その成果は、日本語文法学会の機関誌、「日本語文法」第3巻第2号所収の「引用節に現れる視点要素とスタイル要素」という論文として公表されている。そこでは、視点要素、スタイル要素という二つのタイプの要素が規定され、引用節での振る舞いが考察されている。これら二つの要素は、本研究においては、すべて広義の意味でのダイクシス表現として規定され、考察対象になる。視点要素は「わたし」、「来る」などの典型的なダイクシス表現,ならびに、ムード形式であるが,4つのタイプに下位分類されている。また,スタイル要素は,プロソディ,男性語/女性語などのスタイル的性質を持つ要素とされ,原話者と引用者の間にスタイル上の差がない場合にはスタイル要素であることが潜在化し,差がある場合には視点要素の視点の取り方に影響を与える場合があるとされている。 なお、今年度は本研究の最終年度にあたり、その全体的な成果は科研費成果報告書として公表される予定である。
|
Research Products
(2 results)