2001 Fiscal Year Annual Research Report
無機・有機反応における同位体分別機構の解明とその生命地球科学への応用
Project/Area Number |
13640489
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平田 岳史 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (10251612)
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Keywords | 遷移金属 / 銅同位体分別 / 亜鉛同位体分別 / 鉄同位体分別 / 無機的反応 / プラズマイオン源質量分析法 / 生物誘起起源鉄鉱床 / Goethite |
Research Abstract |
本研究の目的は、地球化学試料中の遷移金属にみられる同位体分別がどのような機構あるいは反応経路(特に生体活動が関与していると考えられている同位体分別機構)に基づくものなのか理解する点にある。この研究目的のために、まず本年度は、生命の関与しない、いわゆる無機的反応における同位体分別係数を、実験的手法に基いて正確に決定した。分析対象元素としては、生体必須元素である銅と亜鉛をとりあげた。これらの元素は、従来の質量分析法では、精密同位体分析が困難であったが、本研究ではプラズマイオン源質量分析法(ICPMS、東工大既有設備)を用いることにより、従来の1/10〜1/200以下の分析元素量(数オg)において、研究遂行上十分な同位体分析精度(0.01%以下)が得られ、同位体分別係数(Kex)を決定することができた(昨年12月のアメリカ地球物理学会で発表)。この研究を進める上で、IUPAC(国際純正および応用化学連合)が推奨する亜鉛同位体組成データに系統的な誤差があることも明らかとなった。 また、生物誘起起源鉄鉱床(BIM)の鉄同位体分析についてもデータ取得を進め、鉄同位体比変動が、群馬鉄鉱床のGoethite相に普遍的に存在することや、Goethite相とJarosite相が混在する場所では、同位体比の変動幅が異なることも明らかとなった。現在のところ、同位体比変動の原因は特定できていないが、天然の試料において、鉄の同位体組成が‰オーダーで変動していることが、決して特異的な例でないことを示唆できたと考えている(論文投稿中)。平成14年度に計画している有機的反応における同位体分別実験において、銅、亜鉛とともに、鉄についても実験を行う予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Takafumi Hirata, Takeshi Ohno: "In-situ isotopic ratio analysis of iron using a laser ablation-multiple collector-inductively coupled plasma mass spectrometry (LA-MC-ICPMS)"J.Anal.Atom, Sectrom.. 16. 487-491 (2001)
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[Publications] Takafumi Hirata: "Determinations of Zr isotopic composition and U-Pb age for terrestrial and extraterrestrial zircons and baddeleytes using laser ablation-inductively coupled plasma mass spectrometry : implications for Nb-Zr isotopic systematics"Chemical Geology. 176. 323-342 (2001)
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[Publications] Michinari Hattori, Takafumi Hirata: "A novel sample decomposition technique at atmospheric pressure for the determination of Os abundances in iron meteorites using isotope dilution inductively coupled plasma-mass spectrometry"The Analyst (London). 126. 846-851 (2001)
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[Publications] T.Fujii, T.Hirata, Y.Shibahara, K.Nishizawa: "Mass -dependent and mass -independent isotopic effects of zinc in chemical exchange reactions using liquid chromatography with a cryptand stationary phase"Phys.Chem.Chem.Phys.. 3. 3125-3129 (2001)
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[Publications] T.Fujii, H.Moriyama, Hirata, K.Nishizawa: "Isotopic effects of hafnium in solvent extraction using crown ethers"Bull.Chem.Soc.. 74. 1031-1032 (2001)
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[Publications] 平田岳史: "絶対年代測定法、全地球史解読"大日本出版. 535 (2001)
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[Publications] 平田岳史: "地球の誕生と形成直後の進化「マントル・地殻の地球化学地球化学」"培風館. 347 (2001)