放射線照射の及ぼすヒトがん細胞ミトコンドリア代謝への影響の解析

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13670961
• Research Institution: Dokkyo Medical University
• Principal Investigator: 古田 雅也 獨協医科大学, 医学部, 講師 (00261850)
• Keywords: 放射線 / 肺がん / ミトコンドリア / 腫瘍代謝

Research Abstract

放射線照射後のミトコンドリア膜電位の経時的変化を,ヒト肺癌がん細胞A549を用いて解析した.ミトコンドリア膜電位はシアニン色素であるDiOC6(3)(3,3'-dihexyloxacarbocyanine iodide)を用いてflow cytometryにて測定することとした.また,測定したミトコンドリア膜電位は照射直後のコントロール群(非照射群)の膜電位との比で表示した.
1.照射直後から照射群(3Gy,9Gy)のミトコンドリア膜電位はコントロールに比較して増大した(3Gy,1.05+/-0.02,p<0.05;9Gy,1.06+/-0.03).
2.照射1時間後には,膜電位はコントロールおよび3Gy照射群で増大した(control,1.15+/-0.03;3Gy,1.15+/-0.02).しかし9Gy照射群ではむしろいったん減少した(1.01+/-0.02,P<0.01).
3.照射8時間後では,コントロール群でミトコンドリア膜電位は再び増大した(1.28+/-0.03).一方,非照射群に比較して照射群では減少していた(3Gy,1.18+/-0.03;9Gy,1.20+/-0.05).
4.照射12時間後では,コントロール群(1.25+/-0.03)に比し,照射群ではミトコンドリア膜電位は有意に減少した(3Gy,1.16+/-0.02,p<0.05;9Gy,1.06+/-0.02,P<0.01).
以上からヒト肺がん細胞A549では,放射線照射直後に一過性のミトコンドリア代謝の亢進が生じること,また,照射12時間後には照射線量に依存してミトコンドリア代謝は低下することが示唆された.