2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13671774
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 真人 金沢大学, 医学系研究科, 助手 (50283106)
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Keywords | プロブスト交連切断モデル / 顔面神経障害モデル / エリスロポエイン / TJ-23 / フリーラジカル消去作用 |
Research Abstract |
障害後の中枢神経の変性を防ぎ、再生を促すための方法を検討するために、顔面神経系と中枢聴覚系を解析対象としている。顔面神経系の研究では、(A)側頭骨外切断モデル、(B)側頭骨内神経引き抜きモデル、(C)脳幹部切断モデルを確立し、神経軸索障害後の顔面神経核起始ニューロンおよび、その周囲のグリアの変化を比較検討した。次に各種の薬剤が障害後の顔面神経核におよぼす影響を検討した。薬剤としては、(1)グルココルチコイド、(2)エリスロポエチン、(3)TJ-23を検討した。この内15年度には(2)(3)を使用した。薬剤の選択にあたり留意したことは、"研究の成果を早期に臨床応用できること"であり、したがって"薬剤の安全性"を最も重要な選択基準とした。 その結果、これらの薬剤はFree Radical Scavengerとして働き、末梢神経障害モデル((A)(B))では起始ニューロンで励起されるNOSの反応を抑制していた。引き抜きモデル((B))では通常、損傷ニューロンの多くは遅発性細胞死に至るが、TJ-23は神経保護的に作用し細胞死を抑制していた。さらに末梢神経系では損傷ニューロンの細胞死さえ防げれば、その旺盛な再生力によって必ずや神経は再生することがわかった。 一方で中枢神経損傷後の細胞死の抑制と神経再生は、やはり単独の手法では難しい。脳幹部切断モデル((C))では、エリスロポエチン、TJ-23投与群でも、最終的には損傷ニューロンの細胞死は免れない。しかし障害後2週間までの亜急性期には神経細胞の延命効果が確認された。つまり障害後7日以内にみられる、炎症性サイトカインの極端な発現増加を抑制しFree Radical等を抑えることで、外傷後早期の著名な細胞死からある程度神経細胞を守ることはできる。中枢神経障害後に神経細胞が生き延びるためには、さらに障害部位の環境を許容的に変える必要がある(環境の幼若化)。これらの結果を踏まえて、中枢聴覚系の障害実験では胎仔脳組織の移植と上記薬剤投与の併用治療の効果を検討中である。
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