2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本語学習者と母語話者の語りの談話における指示表現使用についての研究
Project/Area Number |
13680348
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡辺 文生 山形大学, 人文学部, 助教授 (00212324)
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Keywords | 談話分析 / 指示表現 / 日本語母語話者 / 日本語学習者 / 談話のまとまり |
Research Abstract |
アニメーションのストーリーについて語る日本語母語話者・日本語学習者の談話データを文字化およびコンピュータに入力し,それらのデタの分析を行った。 先行研究などから,談話における指示表現形式の選択の原則は次の3つにまとめられる。1.指示対象が初めて談話に導入されるときは名詞句で表される。2.聞き手の意識の中心にある指示対象には省略形が使われる。3.指示対象がしばらく発話の中に実現されず,聞き手の意識の中心からはずれてしまった場合(指示距離が遠い場合)や,他の対象を指示しているとも考えられるとき(干渉要素がある場合)は名詞句が使われる。 これらの3点は,談話全体をマクロな視点から眺めたときには,説明力を持つものと言えるが,日本語母語話者の談話に現れる個々の指示表現の形式を見ると,これらの原則では予測できない使われ方が見受けられた。 日本語母語話者は,場面の境界などで指示表現の原則的な選択の仕方に則らずに語ることが多い。省略可能な文脈で名詞句を使うことは,上の原則の2に反するが,これは空間的場面展開のような談話の区切りを示すマーカーになっている。また,原則の3に反する潜在的にあいまいな省略形の使用は,副次的な登場人物の行為など同一場面内の比較的小さな出来事の切れ目に生じて,登場人物間の重要度の違いを示す手がかりにもなっている。 学習者の談話では,動作主が変わるたびに名詞句を用いたり,主要な登場人物に省略形を使い続ける例が見受けられたが,これらは談話を構造化する技術の未熟さを示すという点では同じと言える。 母語話者の談話では,一見指示表現選択の原則を破っているように見えても,それらの指示表現の使い方が談話のまとまりを示す一手段となっているということが明らかになった。
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Research Products
(2 results)