2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13720014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
森 稔樹 大分大学, 教育福祉科学部・文部教官(講師) (10295157)
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Keywords | 財政高権 / 対象高権 / 収入高権 / 交付金 / 分担金 / 財政調整法(州租税法) |
Research Abstract |
今年度は、研究計画において示した通り、主に、資料収集、および、アルベルト・ヘンゼルの財政調整法理論を中心としている。課題名にヴァイマール共和国期をあげているが、理諭的考察に際してはドイツ帝国期を対象に加えることにより、ドイツ帝国憲法および財政関連諸法律と、ヴァイマール憲法および州租税法(財政調整法)との対比、そして理諭の形成に与えた影響を検討することとした。 日本において、財政調整の理論的研究は、主に財政学において行われている。しかし、ヘンゼル以外、ドイツにおいては国法学(憲法学)においても研究がなされている(というより、そもそも国法学の概念であった)。国法学的見地からすれば、財政調整は、連邦自体と連邦構成国(いずれも国家高権を備える)の財政高権間の調整である。連邦国家において、構成国の国家高権が制約されるならば、財政高権も制約されると考えられがちであるが、必ずしもその通りとは言えない(これは、日本国憲法下の地方分権や地方税財政を考察する際にも参考になるであろう)。ヘンゼルは、当時の連邦国家(アメリカ合衆国やスイスなど),を検証し、国家高権と財政高権とが、少なくとも連邦憲法において同方向性にないことを証明しようとした。 その際、彼が用いた概念が、対象高権と収入高権である。対象高権は主に租税関係法律の立法権限を、収入高権は公課の収入の帰属に関する権限である。この両者が連邦自体と構成国とにどのように配分されるかにより、財政調整の基本的制度が決定される。ヘンゼルは、対象高権と収入高権とを用いて交付金システムと分担金システム(など)のモデルを構築し、妥当性を実証していくのである(日本の法律学においては対象高権と収入高権の区別自体がなされていない。また、交付金システムおよび分担金システムの検討もなされていない)。その上で、分担金システムの優位性を主張する。 また、財政調整法理論を検討する際、この言葉の発祥の地でもあるスイス連邦を忘れてはならない。今年度の研究においては、19世紀のスイス連邦の財政調整制度をも対象に加え、ヘンゼルの検討を中心に扱った(これも、日本においてはほとんど検討されてこなかった)。財政調整という概念自体が、財政における中央集権化(連邦構成国の対象高権への制約)に対する一種の補償である。スイスの制度が、ヘンゼルを通じてヴァイマール共和国の財政制度に影響を与えた可能性が高いのである。
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Research Products
(1 results)