2001 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国における少数民族問題の実態解明と民族政策の変遷に関する研究
Project/Area Number |
13720072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
星野 昌裕 北九州市立大学, 外国語学部, 助教授 (00316150)
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Keywords | 中国 / 民族 / 民族問題 / 少数民族 / 基層選挙 / 民族区域自治 / 民族政策 / 村民自治 |
Research Abstract |
本年度は(1)中国での実地調査、(2)国内外での資料収集、(3)1980年代以降の中国の民族問題の質的変遷の3点を軸に研究を実施した。中国での実施調査は青海省平安県古城回族郷で行った。現地では青海省民族事務委員会の関係者及び古城回族郷の中国共産党書記からヒアリング調査を実施し、同郷の管轄下にある14の村(うち4つが漢族村、5つが同族村、5つが漢族とチベット族の雑居村:以下漢蔵雑居村)で1999年に実施された村民自治選挙の実施状況を中心に、基層レベルにおける村民自治の実態を明らかにできた。例えば、14村のうち12村で現職が敗北し新人村長が選出されたこと、漢蔵雑居村のうちマイノリティーであるチベット族が村長となっている村が2つにすぎないこと、漢蔵雑居村のうち選挙によって村長の出身民族が変わったのは1村(漢族からチベット族へ)に過ぎず調査地のように人口流動が少ない地域では村長選出に際し民族成分以外の要因がより重要な投票行動要因となっていることなどの知見を得られた。中国の少数民族地域では、当地の少数民族に行政トップ職を担当させることが法律(民族区域自治法)で規定されている。しかし、選挙によって選出される村長が少数民族であるとは限らないという少数民族地域における村民自治の実態は、村民選挙が民族区域自治政策の束縛を受けていないことを意味している。これは村民選挙の長所がまさに村民による直接選挙という点に求められる結果といえるが、将来的には民族区域自治政策の理念と村民自治の実態の乖離が民族問題に発展する可能性もあるといえる。また収集資料をもとに改革開放時代の少数民族問題の質的変遷について研究を進めているが、その結果1999年代以降少数民族による分離独立の主張が強まっていることが明らかとなった。ソ連崩壊など国際情勢の変化、国内の取締りの強化などがその背景として考えられるが、詳細な検討は次年度以降の研究課題としたい。
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