Research Abstract |
本研究では,ビヘイビアアプローチの枠組みでのシステム解析に関する有用な基礎理論の開発を目的として,二次差分形式に基づく消散性理論の構築を行っている.この1年問で研究当初に計画した内容にほぼ従う形で研究を遂行することができた.大きく分けると以下の3つの成果を得ている. まず,二次差分形式を用いた離散時間における消散性の基礎理論として,蓄積関数の重要な性質を理論的に解明した.具体的には,連続時間とは異なる点として,システム内部に蓄えることができるエネルギーがシステムの状態の二次形式で表されるという性質は一般には成立せず,蓄積関数が準正定な場合にその性質が成立することを示した点である.そして,関連するいくつかの離散時間特有の性質も導出した.これらの結果は今後,消散理論を応用する場合の有益な性質になるのみでなく,二次差分形式を考案する元となったビヘイビアアプローチの分野においても,理論的な性質を提供している点で重要である. 次に,この二次差分形式に基づく離散時間消散性のシステム制御理論への応用として,H_2制御、H_2/H_∞制御問題ををビヘイビアの枠組みで捉えることを試み,いくつかの結果を得た.この点については連続時間でも結果が得られていないので,離散時間への基礎として,連続時間の場合のH_2制御,H_2/H_∞制御問題を考え,結果として制御則が存在するための必要十分条件と,制御則の表現を求めることに成功した.また,数値例を通して従来のシステム制御理論にはない,ビヘイビア特有の性質も見出すことができた.これらの結果はビヘイビアアプローチの有用性を検証しているという点で非常に有益であるといえる.また,これらの結果は離散時間への拡張をする際にも,同様な証明方法が使えることから,その点でも非常に有益な結果を得たといえる. そして,オランダのMaastricht大学のDr.Paolo Rapisardaとの共同研究により,離散時間消散性のシステム同定への応用であるH_∞規範に基づくMost Powerful Unfalsified Model(MPUM)について,そのモデルが存在するための必要十分条件およびモデルのパラメトリゼーションをスカラーの場合に関して求めることができた.また,古典的な解析学の結果の一つであるCaratheodory Feijerの補間問題とも合致し,かつ再帰的な証明方法をあたえることにより具体的なアルゴリズムも得ることができた.アルゴリズムが与えられるということは,実用上の観点から非常に重要である.また,当初の目的であった離散時間消散性と補間理論の相互関係についても,ある性質を見出すことができ,理論的に見ても重要な結果である.
|