Research Abstract |
免疫制御細胞の誘導における非特異的免疫抑制剤の影響を検討した.まず,現在臨床において最も頻用されている,FK506を用い実験を行った.投与量として,A群(0.1mg/kg/day),B群(0.3mg/kg/day),C群(0.5mg/kg/day),D群(1.0mg/kg/day)を設定し,これを,ドナー脾細胞を経気管内投与した日より脾細胞の移入する前日まで,連日腹腔内投与した.ドナー脾細胞の経気管内投与7日後,脾細胞を移入し,心移植を行った.その結果,A群では,MST50日と移植心の生着延長を認め,免疫制御細胞の誘導が示唆された.一方,B群,C群,D群では,移植心は早期に拒絶され(MST=11,7,7日),免疫制御細胞の誘導が阻害されたと考えられた.この結果は,FK506は,低濃度では免疫制御細胞の誘導を促し,高濃度では,免疫制御細胞の誘導を阻害する,相反する作用をもつことが示唆されたといえる.つまり,臨床では,急性拒絶反応を抑制するためにFK506が使用されるが,これを回避した後,低濃度で維持することが免疫制御細胞の誘導に有利であるといえる. 以上のメカニズムとして,FK506は,主にIL-2の抑制によるT-cellの増殖抑制により免疫を制御していると考えられているが,低濃度により免疫制御細胞の誘導を促し,高濃度では免疫制御細胞の誘導を阻害したことから,免疫制御細胞の誘導のシグナルは,全免疫系の抑制下では伝達されず,拒絶反応に関与する何らかの信号がこのシグナルの伝達に重要であることが推察された.
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