2001 Fiscal Year Annual Research Report
多自然型工法による湖岸の再自然化が微小生物群集の多様性におよぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
13780430
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中里 亮治 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 助手 (30292410)
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Keywords | 湖沼 / 多自然型工法 / 微小生物群集 / 多様性 / 環境影響評価 |
Research Abstract |
人工渚が逐次建設されている霞ケ浦(北浦)湖岸の水原地区において、多自然型工法による湖岸の再自然化が微小生物群集の多様性に及ぼす影響について明らかにするため、多自然型護岸施工後3年目(Sta.A)、施工0年目(Sta.B)およびコンクリート護岸前の非施工区(Sta.D)の3地区を調査定点として、微小動物群集とその主要な捕食者である魚類についてそれらの種組成、個体数および群集多様度の季節変化を追跡し、地点間の比較をした。 採集期間を通じたユスリカ幼虫の出現種数は、多自然型護岸施工区であるSta.AおよびSta.Bでそれぞれ8種および12種が、また非施工区のSta.Dでは10種が出現し、3定点の間で大きな差は見られなかった。Sta.A、Sta.BおよびSta.Dにおけるユスリカ幼虫の平均密度(2001年4月〜10月)はそれぞれ622個体m^<-2>、988個体m^<-2>および889個体m^<-2>であり、Sta.Bで最も高かった。また、ユスリカ幼虫種の多様度指数(1/λ)は、それぞれ2.43、2.40および2.69となり、Sta.Dのそれが最も高い値であったが、平均値および多様度指数ともに3定点の間で統計的な有意差はなかった。 魚類は合計20種が捕獲されたが種組成や個体数は季節によって異なった。Sta.A、Sta.Bではハゼ科魚類が、Sta.Dではボラ、シラウオおよびブルーギルが優占種であった。3定点の間で、単位努力あたりの捕獲個体数の平均値や多様度指数(1/λ)の値に有意差はなかった。また全個体数に占めるハゼ科魚類の割合はSta.AおよびSta.Bで36〜38%、非施工区で8.5%と施工区で高くなった。これら魚類の食性を調べたところ、ブルーギルが動物プランクトンを多く摂食していたのに対し、多自然型護岸施工区の優占魚種であるハゼ類はユスリカ幼虫を主として捕食していた。 多自然型工法による北浦湖岸の再自然化は,微小生物群集(とくにユスリカ類)の多様度を高める方向には直接作用しないが、一方で上位栄養段階の生物(特にハゼ科魚類)の定着を促す役割を果たしていると推察された。
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