2001 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における「想像上の仲間」の実態とその発達的規定因を探る
Project/Area Number |
13871020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠藤 利彦 九州大学, 人間環境学研究院, 助教授 (90242106)
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Keywords | 想像上の仲間 / Invisible Companion / Personified Object / ファンタジー / 情動制御 / 遊び / きょうだい構成 |
Research Abstract |
子どもはしばし、その遊びの中に架空の人物や生き物を登場させ、それらとの間で実にリアルな相互作用を展開する。こうした架空の対象は「想像上の仲間(Imaginary Companion):以後IC」と呼ばれ、これまでも発達心理学の中で相応の関心を払われてきたが、その取り上げられ方は、ふり遊びやごっこ遊びの一種あるいは亜型としてのものであった。しかし、この想像上の仲間には単なるふりなどには留まらない種々の興味深い発達的要素が絡むと考えられ(Gleason et al.,2000)、その実態を組織的に探ることには大きな意味があると考えられる。本研究は、こうした関心の下、3歳から6歳の幼稚園・保育園児を持つ養育者609名(男児320名:女児289名)を対象に質問紙調査を行った。想像上の仲間は特に具体的な見立ての対象を持たない"Invisible Companion"(以後IV)とぬいぐるみや人形等の具体的な見立ての対象を有する"Personified Object"(以後PO)に分けて分析を行った。IVを持つ子の比率は全体の8.6%、POを持つ子の比率は41.6%であり、IC全体として女児の方が男児よりもそれを発現させる確率が高かった。また、発現時期は総じて3歳前後であることが多く、子どもは発現後、約1年程度、それを持ち続けることが一般的であった。さらにIVは子どもと同年齢で対等の仲間として想定されている場合が多いのに対し、POは年下で養護の対象として想定されている場合が多く、またIC全般の特質として、それは子どもが誰かとともにいる状況ではなく"1人で家の中にいる時"に用いられることが多いことが明らかとなった。1人状況において子はICを創発し、その満たされない感情を補償しようとするのかも知れない。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 遠藤 利彦: "赤ちゃんに記憶はあるの?"周産期医学. 31(7). 944-955 (2001)
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[Publications] 遠藤 利彦: "感情をコントロールする力の発達"児童心理. 762. 40-44 (2002)
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[Publications] 遠藤 利彦: "「3歳児神話」の陥穽に関する補足的試論・私論"日本赤ちゃん学会誌. 1(1)(未定). (2002)
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[Publications] 小沢哲史, 遠藤利彦: "養育者の観点から社会的参照を再考する"心理学評論. 44(3). 271-288 (2001)
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[Publications] 齋藤崇子, 中村知靖, 遠藤利彦, 横山まどか: "性格特性語を用いたBig Five尺度の標準化"九州大学心理学研究. 2. 135-144 (2001)
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[Publications] 遠藤 利彦(章分担): "現代心理学[理論]事典"朝倉書店(中島義明編). 815 (2001)
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[Publications] 遠藤 利彦(章分担): "社会的認知ハンドブック"北大路書房(山本真理子・外山みどり他編). 323 (2001)
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[Publications] 遠藤 利彦(章分担): "心理学リーディングス"ナカニシヤ出版(山口裕幸編). 245 (2001)