2001 Fiscal Year Annual Research Report
スメクティックA液晶のパターン形成とその微小球レーザへの応用
Project/Area Number |
13875063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
内藤 裕義 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (90172254)
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Keywords | スメクティックA液晶 / 自己組織化 / 微小球レーザ / 変分計算 / ソフトマテリアル / ヘリカル構造 |
Research Abstract |
本年度は、スメクティックA液晶の自己組織化したパターンの外部印加電界による変化の実験的把握およびその理論的解釈、さらに外部印加電界によるパターン制御の指導原理の確立を目的とした研究を展開した。実験は、スメクティックA液晶と長鎖アルキルアルコールとの混合系を試料に用い行い、温度安定性の優れた温度可変試料ステージにより試料を等方相から徐冷し、スメクティックA相・等方相の共存相を出現させた。スメクティックA相が等方相中で呈するパターンを偏光顕微鏡およびCCDカメラにより観測する。冷却過程中では様々なパターンが観察できるが、スメクティックA相・等方相の共存相で温度を一定にすると真球のスメクティックA相ドメインが見られる。このスメクティックA相ドメインは外部電界を印加することで多数の微小球に分裂する。本年度では、印加電界の強さと微小球の径の関係を実験的に明らかにした。現在、印加電界強度と微小球径との関係を理論的にも明らかにし、外部印加電界によるパターン制御の指導原理を確立すべく、理論的な観点から考察を続けている。 現時点では、すでにスメクティックA液晶や生体膜などの一次構造の類似性に着目し、巨視的パターンの解析的、統一的な解明を終えている。ここでの一次構造の類似性とは、スメクティックA液晶や生体膜では、それぞれ液晶分子、脂質分子が層状構造を有し、かつ、これら分子の平均配向方向が層法線方向にあるということである。熱平衡状態にある巨視的パターンを理論的に調べる場合にはスメクティックA液晶や生体膜の形態を支配するエネルギーとして自由エネルギー、界面エネルギー、弾性エネルギーからなる形態エネルギーを考え、これを微分幾何学的手法と閉曲面条件のみを用いて変分計算を行う。曲面上での形態エネルギーの最小化には微分幾何学的手法を用い、変分計算により形態方程式が得られるが、熱平衡時のパターンはこの方程式の解として得られる。印加電界強度と微小球径の関係は上記形態エネルギーに誘電エネルギーを加え、変分計算を行うことにより電界印加下の形態方程式を得ることができる。従って、球の曲面方程式を形態方程式に代入することにより印加電界と微小球径の関係を得、外部印加電界によるパターン制御の指導原理を確立することができる。なお、この様な理論的手法は汎用性があるため、スメクティックA液晶で本研究課題の遂行中に見出したヘリカル構造についても理論的な解明を進めている。ヘリカル構造は生体物質、液晶などソフトマテリアルでしばしば見出される形態であるためその観察と理論的解釈は重要となる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 轟原正義, 藤原興起, 内藤裕義: "等方相中に成長したチューブ状スメクティックAフィラメントの観察と理論的考察"電気材料技術雑誌. 10・1. 64-70 (2001)
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[Publications] M.Todorokihara, K.Fujihara, H.Naito: "Observation of Smectic-A Helical Filaments in an Isotropic Phase"Proc. International Conference on Pattern Formation and Self-organization in Nonlinear Complex Systems (Beijing 2001). 83-84 (2001)
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[Publications] M.Todorokihara, H.Naito, Z.C.On-Yang: "Pattern Formation of Two-Dimensional Sinectic-A Filaments"Mol. Cryst. Liq. Cryst.. 364. 403-410 (2001)
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[Publications] K.Seike, M.Todorokihara, M.Yainada, H.Naito: "Electric Field-Induced Director Orientation of Smectic-A Domains in an Isotropic Phase"Mol. Cryst. Liq. Cryst.. 366. 865-870 (2001)
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[Publications] 杉村明彦, 内藤裕義: "有機分子素子工学の現状と新展開-液晶界面現象-"電気学会誌. 121-A. 594-597 (2001)