Research Abstract |
本研究は,酵素(トランスグルタミナーゼ,TGase)により,機能性タンパク質や酵素を位置選択的に架橋化する方法論を確立しようとするものである.一般に,異なるタンパク質同士を連結使用とする場合,有機化学的・遺伝子下学的架橋法が用いられるが,それぞれ非特異性,生産性に間題点がある.本研究は,これらの間題点を克服する第3の方法論として「酵素的架橋法」を提案するべく,研究を進めている. 当該年度は,TGaseの新しい基質として我々が見いだしたアポミオグロビン(apoMb)をモデル基質として,その基質特異性について詳細な検討を行った.まず,apoMbをTGaseと共存させることで架橋化サンプルを調製した.その緒果,架橋化後の主生成物としてapoMb二量体が観測された.この緒果は,架橋化部位が限定されており,旦つ極めて位置特異的な架橋が行われている可能性を示唆するものである.そこで,apoMb二量体を質量分析法により解析したところ,架橋化ペプチド断片の直接同定はできなかったが,特定のペプチド断片(80-96,97-102残基)が消失することが明らかとなった.さらに,架橋化部位の同定のために,ヒスタミン及びZ-グルタミルグリシンを,TGaseによりapoMbに導入し質量分析を行ったところ,91番目のグルタミン及び98番目のリジン残基に,これらのプローブが特異的に導入されることを明らかにできた.即ち,apoMbは,Q91-K98の分子間架橋により二量体を形成していることが強く示唆きれた.特筆すべきは,架橋化apoMbにヘム補酵素を加えると,架橋化していないapoMbと同様にそれを活性部位に取り込むことである.即ち,本成果は,機能性タンパク質の特異的二量化という観点から極めて意義深く,且つ未だ未解明な点の多いTGaseの基質特異性に重要な知見を与えるものである.
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