2002 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫疾患としての小児 H.pylori胃炎の解析
Project/Area Number |
13877115
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 邦彦 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60091451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 満 北海道大学, 医学部附属病院, 医員
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Keywords | 小児H. pylori胃炎 / 消化管免疫 / 自己抗体 / IgG抗体 / IgA_1抗体 / IgA_2抗体 / アポトーシス / Toll-like receptor |
Research Abstract |
小児H. pylori胃炎では成人に比してリンパ濾胞の形成が多いのが特徴的であり。ナイーブT細胞やB細胞の浸潤が目立つ。成人のH. pylori胃炎ではメモリーT細胞やサイトカインによる免疫反応が主体であると考えられているが、小児ではH. pyloriに対してより原始的な免疫反応が生じていると考えられる。私たちは、その中心をなす免疫応答としてToll-like receptor (TLR)が重要であることを昨年度までの本研究で明らかにした。即ち、除菌前の胃粘膜生検組織では、粘膜固有層のみならず粘膜上皮間にもTLR-2陽性細胞が侵入している像がみられた。除菌後ではそれらが明らかに減少しているのが確認された。TLR陽性細胞はマクロファージが主体であり,TLRの発現は細菌の貪食、抗原提示などを介してH. pylori胃炎の病態に関与していると考えられた。 我々は今年度、小児H. pylori胃炎において著明に浸潤している免疫担当細胞によって産生される自己抗体を確認するために、H. pylori胃炎組織の組織培養を行い、その上清中に存在する胃壁細胞に対する自己抗体の検討を行った。自己抗体はIgG抗体、IgA_1抗体、IgA_2抗体のサブクラス毎にその存在を検討した。粘膜局所に浸潤しているBリンパ球・形質細胞からは、胃壁細胞に対する自己抗体として、全身免疫系のIgG抗体よりも粘膜免疫に特徴的な抗体であるIgA抗体が中心に産生されていた。TUNEL法および抗PARP抗体を用いた消化管上皮細胞のアポトーシスに関する検討とあわせて考えると、これらの自己抗体(IgA抗体)がアポトーシスを誘導し、それが萎縮性胃炎などの胃炎の慢性化に繋がっているのではないかと考えられた。 以上より、小児H. pylori胃炎ではナイーブT細胞、B細胞、TLR陽性マクロファージなどを中心とした原始的な免疫反応がその初期の病態の中心であり、さらにその慢性化に胃壁に対する自己抗体およびそれによって誘導されるアポトーシスが関係していることが示唆された。消化管免疫に着目した研究は他に類をみず貴重な研究であると考えられる。
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