2001 Fiscal Year Annual Research Report
放射光を用いた腫瘍の微小血管構築と血流動態と低酸素細胞分布のイメージング
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13877138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大屋 夏生 京都大学, 医学研究科, 講師 (70281095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 真寛 京都大学, 医学研究科, 教授 (70173218)
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Keywords | マウス腫瘍 / 透明観察窓 / 放射光 / 微小血管構築 / 微小血流動態 / 低酸素分画 |
Research Abstract |
マウス背部皮膚透明観察窓を用いて、3種類の腫瘍血管の成長を顕微鏡下に写真撮影し、顕微鏡写真をもとにそれぞれ腫瘍血管の経時的な変化を検討した。腫瘍移植後、腫瘍塊周囲の血管の拡張がまず認められた。SCCVIIは7日目に、EMT6は4日目に新生血管が認められ、後者は前者より腫瘍血管径が有意に大きく径不整で、屈曲蛇行した腫瘍血管がみられた。C3Hマウス自然発生乳癌はより高分化で、籠状の拡張した腫瘍血管を認めた。 異なる再酸素化のパターンを持つSCCVIIとEMT6を移植したマウスに、蛍光標識赤血球の血管内投与後約90分連続して顕微鏡下にビデオ撮影し、赤血球fluxを測定した。両腫瘍とも15分から20分周期の変動が認められ、間欠的血流の存在が確認された。EMT6ではfluxの変動は各血管の間でランダムであったのに対し、SCCVIIではその他に同期したflux変動をとる血管群が観察され、この現象は急性低酸素の成因の一つと考えられた。 移植後10日から12日目のマウスの腫瘍を、放射光による微小血管造影下に撮影した。大動脈弓内留置カテーテルより造影剤を急速注入した。撮影対象が500μmと均一な薄さであるため9keVという低圧撮影にて血行動態が観察可能であった。直径10-20μmまでの腫瘍内毛細血管が描出され、いずれの腫瘍も顕微鏡下での観察と血管構築は一致した。動静脈瘻が認められ、毛細血管から細静脈への連続は不明瞭であり、その部位に一致して造影剤漏出がみられた。これらは顕微鏡による観察では得られない所見であった。 放射線・抗癌剤抵抗性に寄与する腫瘍内低酸素の発生機序には、拡散に依存する慢性低酸素と血流変動に起因する急性低酸素の関与が提唱されてきたが、透明観察窓を用いた本研究の結果から、血管構築と血流動態による両メカニズムが視覚的に確認された。また、個々の腫瘍内でも血管の多寡や、血流の同期現象の有無から、酸素状態の空間的不均一性が示された。
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