2001 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素を用いた漆遺物に対する保存処理の基礎的研究
Project/Area Number |
13878022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
手代木 美穂 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80323070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 宏 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10168479)
高妻 洋成 独立行政法人 奈良文化財研究所, 主任研究員 (80234699)
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Keywords | 二酸化炭素 / 超臨界流体 / 超臨界乾燥 / 漆 / 埋蔵水浸木製品 / 保存科学 |
Research Abstract |
漆遺物の保存処理は強化薬剤含浸工程、および乾燥工程あるいは薬剤固化工程の2段階よりなる。しかし、漆遺物が胎・下地・漆塗膜・加飾と種々の材料の複合体であることにより、処理中の変形や漆膜の剥がれなどが問題となっており、よりよい処理法の模索が続けられている。 本研究で取り組む二酸化炭素を用いた漆遺物に対する処理法は、従来法では難しかった漆膜の微小穴から木胎組織の細部まで強化薬剤を伴った超臨界二酸化炭素が細部まで入りこみ、その後の減圧過程において薬剤が内部でとどまることで組織を「強化」し、溶媒のみを選択的に抽出することで「乾燥」を行う『強化剤残留・強化+乾燥』のプロセスである。また、従来2段階法の処理となるところを1段階で行うことで、より簡便に変形・剥離の少ない保存処理法を確立するための基礎的な研究となる。 初年度である平成13年度は漆が塗布されていない木製遺物を試料として、超臨界二酸化炭素を用いた実験処理を行った。埋蔵水浸木製品が内包する水は超臨界二酸化炭素と両者に対して親和性が高いエタノールを用いることで置換して実験を進めた。始めに現行2段階工程を考慮して、木製遺物に対してエタノール置換・PEGエタノール溶液で含浸したのち、超臨界二酸化炭素を用いて乾燥処理を行ったところ、PEGは試料内に70%^*残存し、寸法変化も-1%であった。処理時間は置換・含浸に20日、乾燥時間には2時間を要した。次に含浸〜乾燥連続1工程処理の可能性を確かめるために、水浸木製品とPEGエタノール溶液を処理槽に同時に導入し、実験条件および操作を変えることで含浸〜乾燥処理を行ったところ、PEGは試料内に66%^*残存し、寸法変化は+0。2〜3。7%であった。処理時間は全体で4日間であった。以上のことから、従来の木製遺物に対して2工程を要する保存処理が超臨界二酸化炭素を使うことによって1工程で含浸〜乾燥を行う事が可能であること、処理時間の大幅短縮が可能であることが示唆された。 平成14年度ではこの結果から漆遺物に対しての超臨界二酸化炭素を用いた処理を適用し、最終的には強化薬剤の含浸〜乾燥処理を連続1工程内で行うことを可能にしたいと考えている。 (*PEG初期導入量を100%として)
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Research Products
(1 results)
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[Publications] M.TESHIROGI, Y.KODZUMA, H.INOMATA, et al.: "Conservation treatment and Drying of Water-logged Wood with Supercritical Carbon Dioxide"International Congress on the Conservation and Restoration for Archaeological Objects. 117-120 (2002)