2013 Fiscal Year Annual Research Report
新興感染症"Leishmania siamensis感染症"の迅速診断法の開発
Project/Area Number |
13F03090
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 大智 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SIRIPATTANAPIPON Suradej 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | リーシュマニア / タイ / 血清診断 |
Research Abstract |
タイではリーシュマニア症は輸入症例だけで、本来は本症の流行がない国であったが、2006年あたりから国外に出たことのないヒトで内臓型リーシュマニア症の発生が報告されるようになった。感染原虫種は新種の原虫(2009年にLeishmania siamensisと命名)であることが明らかにされ、新興感染症として問題になっている。病原体を媒介するサシチョウバエやリザーバーとなる動物の調査も行われているが、病原体の伝播機構や流行地域の広がり、ヒトや動物への潜在リスクなど、緊急に解明しなければならないことは多い。本研究は、イムノクロマト法を用いた迅速簡便かつ感度・特異性の高い抗L. siamensis抗体の検出法を確立し、流行地域でのヒトの血清診断およびヒトやリザーバーの疫学調査へ応用することを目的とする。 本年度の研究では、L. siamensisの組換え抗原タンパクを作製することに成功した。遺伝的に異なる2つの1ineageに属するL. siamensisから、それぞれリピート配列を持つkinesin遺伝子を単離し、大腸菌タンパク発現ベクターに組込んだ。組換えタンパクを発現、精製し、感染者血清との反応性を検討したところ、これら組換えタンパクは、L. siamensis感染者血清に認識されることが確認された。しかしながらこの組換えタンパクは、他種のリーシュマニアに感染した患者血清とも反応が見られたことから、L. siamensis特異的な抗原部位を検索するとともに他の抗原タンパクも検索し、L. siamensisに対して特異性の高い抗原を探索していく必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、L. siamensis抗原の組換えタンパクの作製に初めて成功し、これが感染者の血清に認識されることを確認した。この結果は、最終的な目標である本症の血清診断系を作製するうえでの第一歩になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、L. siamensisに対して特異性の高い抗原や抗原認識部位の探索が必要と考えている。このことから、感染者血清に認識されたkinesin抗原の短いフラグメントを作製して、特異性の高い抗原部位を探索する予定である。またこれと並行して、他の免疫原性の高い抗原を探索し、より特異性の高い抗原を同定することにより、他種のリーシュマニア原虫感染と区別することのできる血清診断系の作成を行っていきたいと考えている。
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