2014 Fiscal Year Annual Research Report
新興感染症"Leishmania siamensis感染症"の迅速診断法の開発
Project/Area Number |
13F03090
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 大智 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (00346579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SIRIPATTANAPIPONG Suradej 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リーシュマニア / タイ / 診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
タイではリーシュマニア症は輸入症例だけで、本来は本症の流行がない国であったが、2006年あたりから国外に出たことのないヒトで内臓型リーシュマニア症の発生が報告されるようになった。感染原虫種は新種の原虫(2009年にLeishmania siamensisと命名)であることが明らかにされ、新興感染症として問題になっている。病原体を媒介するサシチョウバエやリザーバーとなる動物の調査も行われているが、病原体の伝播機構や流行地域の広がり、ヒトや動物への潜在リスクなど、緊急に解明しなければならないことは多い。本研究は、イムノクロマト法を用いた迅速簡便かつ感度・特異性の高い抗L. siamensis抗体の検出法を確立し、流行地域でのヒトの血清診断および疫学調査へ応用することを目的とする。 本年度の研究では、L. siamensisから抽出したDNAから4つの遺伝子(kinesin, hsp70, hsp83, gp63)を増幅、大腸菌発現系を用いて組換えタンパクを作製し、L. siamensisおよびL. donovani感染者血清との反応性を検討した。その結果、ほとんどの感染者血清はKinesinに強く反応し、次いでHSP70やHSP80にも反応を示した。GP60に対しては、一部の感染者血清しか反応しなかった。このうち、Kinesinに対してはL. siamensis感染者血清、L. donovani感染者血清ともに強く反応したが、HSP70やHSP80に対しては、L. siamensis感染者血清により特異的な反応がみとめられた。このことから、内臓型リーシュマニア症の診断にはKinesinが、L. siamensis感染に対する特異診断にはHSP70やHSP80が有用であることが示唆された。今後は、より特異性の高いL. siamensis抗原部位を同定する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、L. siamensisの4種の抗原の組換えタンパクの作製に成功し、感染者血清に対する反応性を明らかにすることができた。今後はさらに特異抗原部位を明らかにすることで、これらの組換えタンパクが、本症の血清診断に有用なツールになることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、KinesinがL. siamensis感染を含めた内臓型リーシュマニア症の診断ツールに、HSP70やHSP80がL. siamensis感染に特異的な診断ツールとして利用できることを示唆する結果が得られている。今後は、特異性の高い診断系構築のためには、L. siamensisに対してより特異性の高いHSP70やHSP80の抗原部位を同定する必要があると考えている。このことから、HSP70やHSP80の短いフラグメントを作製して、感染者血清を用いて特異的な抗原部位を探索する予定である。またこれと並行して、最近入手できたL. siamensisの凍結検体から抽出したタンパクを用いて、二次元電気泳動を用いたイムノブロットなどにより、感染者血清に認識される免疫原性の高い抗原を網羅的に探索していきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)