2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本古辞書における唐代の字体規範の受容に関する実証的研究
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13F03302
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 証壽 北海道大学, 文学研究科, 教授 (20176093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JIA Zhi 北海道大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日本古辞書 / 唐代の字体規範 / 開成石経 / 群書新定字様 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、平成25年度の引き続き、文献調査によるデータベース構築および分析を中心とした。 まず、本研究では、唐代に編まれた「字様」と呼ばれる小学書を調査対象とするため、現存する字様の形態について調べる必要がある。そのため、2014年6月に、石塚晴通名誉教授(北海道大学)をはじめとする調査団と同行し、受入教員の指導の下に大英図書館、フランス国立図書館に分蔵されている原本資料(『S.388文献』を中心に)に調査を行った。調査結果は今年中に公開する予定である。 また、唐代の字体規範の実態を探るために、開成石経に調査を行う必要がある。そこで、25年の10月から、「開成五経字様」「開成新加九経字様」の見出し字の字形を、「開成易経」「開成孝経」「開成論語」の本文の字形に照らすことによって、「開成五経字様」「開成新加九経字様」が開成石経の字体規範を明示するものとして、その末尾に附刻されていることを最終的に証明した。これにより、唐代の字体規範の実態を知ることができ、本研究を展開していくための重要な手がかりとなる。また、現存する開成石経の形態について調べるために、2015年3月に、陜西省博物館で原本調査を行い、その結果も今年中に公開する予定である。また、2014年11月に、杭州孔廟に蔵される紹興石経(南宋字体規範を提示するもの)、2015年3月に、中国国家図書館に蔵される嘉祐石経(北宋字体規範を提示するもの)を中心に原本調査を行った。 最後に、研究を進めていくために、自己の研究について成果発表することは欠かせない。そのため、2014年11月に、第八屆漢文佛典語言學國際學術研討會(於南京師範大学)で、「日本上代佛典音義對唐代字樣的利用」を題にして、研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画とおり、文献調査によるデータベース構築および分析を行っただけではなく、開成石経をはじめとする石経に調査を行うことによって、唐代の字体規範の実態を知ることができ、その調査結果は、漢字字体規範史研究に対して積極的な意義を持っているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、日本古辞書における字書記述と唐代の字体規範との関連を分析し、唐代の字体規範が日本の標準字体に如何なる影響を与えたのかを検討する。現在は「『新撰字鏡』における字様の利用について―『干禄字書』の利用箇所の整理と分析 ―」を題にして論文を執筆し、該当内容は2015年5月10日に「第112回訓点語学会研究発表会」(於京都大学)で研究発表する予定である。 また、唐代の字体規範の実態を探るために、開成石経に調査を行う必要がある。開成石経は114石があり、今まで『易経』『孝経』『論語』『五経文字』『新加九経字様』を中心に調査を行ったが、今後は引き続き現地で残りの石経に重点を置き調査を行う予定である。なお、本調査は「漢字字体規範史データベース」(平成23年度日本学術振興会課題番号238010)と関わるものであり、重要な研究意義を持っている。
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