2003 Fiscal Year Annual Research Report
脳内サイトカインによる中枢神経機能の制御メカニズム:分子から精神活動へ
Project/Area Number |
13GS0014
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 寿明 新潟大学, 脳研究所, 助手 (90332650)
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (80281012)
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (70221372)
豊岡 和彦 国立療養所犀潟病院, 精神科, 医長 (90345504)
水野 誠 新潟大学, 脳研究所, 助手 (20345515)
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Keywords | 精神疾患 / 脳栄養因子 / サイトカイン / ストレス / 神経発達 / モデル動物 / 統合失調症 |
Research Abstract |
年度計画での脳機能疾患メカニズムに迫るべく7項目の研究目標を設定し以下の成果を得た。 1)統合失調症患者等での剖検死後脳のプロテオーム解析を実施する。 当脳研究所の保存死後脳よりサンプリングを行い、国立精神センターと共同で分析を開始した。 2)収集・作製された当該サイトカイン遺伝子改変動物の脳異常を分子生物学的に解析する。 上皮成長因子(EGF)とインターロイキン1(IL-1)のリガンド過剰発現マウス(TG)とそのレセプターノックアウトマウス(KO)を入手、飼育、分析したところ、EGFの作用点は主にドパミン系であること、IL-1が脳内でEGF様因子を放出している可能性があることが判明した。 3)収集・作製された当該サイトカイン遺伝子改変動物の脳構造異常を病理学的に解析する。 新生時EGF投与のラット、新生時IL-1投与のラットでは、成熟後に脳重が5-10%低下していることが判明し、現在、対応TGマウスでも例数を増やして比較検討中である。 4)初代培養ニューロン中で各種サイトカインのもたらすシナプスの分子変化を捉える。 初代大脳皮質神経の培養中にEGFを添加した場合、前シナプスタンパクではシナプトフィジン、シナプシン〓を中心に発現低下、後シナプスタンパクではSAP97,GRIPなどが減少した。また、この作用はBDNFなどのシナプス発達促進性の因子に対し拮抗的であった。中脳ドパミン神経の培養系ではEGFに強い栄養因子活性がみられ、ニューライトの伸長、肥大化を誘導した。 5)慢性サイトカイン投与動物の認知異常、情動異常を薬理学的行動学的に分析する。 新生時EGF投与のラットでは作業記憶、ラテントインヒビションなどの認知脳機能に異常があることが判明した。IL-1の新生仔投与モデルでもほぼ同様の異常を呈することが判った。しかし同じ実験を複数種のマウスを用いて実施したところ全く異なった反応が観察された。このことはサイトカインの認知行動発達に及ぼす作用が遺伝的背景に強い影響を受けていることを示していた。 6)ラット前頭葉、海馬スライスを使い各種サイトカインのもたらすシナプス電流変化を捉える。 新生仔マウスに2週齢までEGFを連投し、その後の脳シナプス電流変化を大脳皮質の前頭領域で測定した。GABA含有の抑制ニューロンでの自発性シナプス活動の強度、頻度ともに顕著な低下を示した。この結果はEGFがシナプスの形成・成熟を阻害したことを示唆するものと考えられる。 7)動物用PETなどで遺伝子改変動物の脳機能画像を取得しサイトカイン投与時の結果と比較する。 この計画については、グルコース取り込みの予備実験を重ねていて、本実験は来年以降に延期した。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] Namba H 他2名: "Transforming growth factor-alpha changes firing properties of developing neocortical GABAergic neurons by down-regulation of voltage-gated potassium currents."Neuroscience.. 122(3). 637-646 (2003)
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[Publications] Jourdi H 他8名: "Brain-derived neurotrophic factor signal enhances and maintains the expression of AMPA receptor-associated PDZ proteins in developing cortical neurons."Dev Biol.. 263(2). 216-230 (2003)
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[Publications] Nagano T 他7名: "Brain-derived neurotrophic factor upregulates and maintains AMPA receptor currents in neocortical GABAergic neurons."Mol Cell Neurosci.. 24(2). 340-356 (2003)
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[Publications] Araki T 他2名: "Tyrosyl phosphorylation of Shp2 is required for normal ERK activation in response to some, but not all, growth factors."J Biol Chem.. 278(43). 41677-41684 (2003)
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[Publications] Iritani S 他4名: "Immunohistochemical study of brain-derived neurotrophic factor and its receptor, TrkB, in the hippocampal formation of schizophrenic brains."Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.. 27(5). 801-807 (2003)
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[Publications] Araki K 他10名: "A palmitoylated RING finger ubiquitin ligase and its homologue in the brain membranes."J Neurochem.. 86(3). 749-762 (2003)
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[Publications] Inamura N 他2名: "Developmental changes of eukaryotic initiation factor 2B subunits in rat hippocampus."Neurosci Lett.. 346(1-2). 117-119 (2003)
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[Publications] Seki M 他4名: "BDNF is upregulated by postnatal development and visual experience : quantitative and immunohistochemical analyses of BDNF in the rat retina."Invest Ophthalmol Vis Sci.. 44(7). 3211-3218 (2003)
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[Publications] Toyooka K 他11名: "A decrease in interleukin-1 receptor antagonist expression in the prefrontal cortex of schizophrenic patients."Neurosci Res.. 46(3). 299-307 (2003)
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[Publications] Amada N 他6名: "A novel rat orthologue and homologue for the Drosophila crooked neck gene in neural stem cells and their immediate descendants."J Biochem (Tokyo).. 133(5). 615-623 (2003)