2005 Fiscal Year Annual Research Report
脳内サイトカインによる中枢神経機能の制御メカニズム:分子から精神活動へ
Project/Area Number |
13GS0014
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (70221372)
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (80281012)
水野 誠 新潟大学, 超域研究機構, 助教授 (20345515)
難波 寿明 新潟大学, 脳研究所, 助手 (90332650)
高橋 誠 新潟大学, 医歯学系, 助手 (40323985)
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Keywords | サイトカイン / ドパミン / 精神疾患 / 脳発達 / 栄養因子 |
Research Abstract |
本研究では、5年間にわたりサイトカインの脳内標的とそのシグナル路、生理作用、認知行動作用を解析してきた。最終年度においては脳内サイトカインの作用部位、機序の分析、とりまとめを中心に以下のような研究を実施した。 1)遺伝子改変動物やサイトカイン投与動物の神経興奮性薬物に対する反応を分析する。 サイトカインの過剰発現はメタアンフェタミンなどの神経刺激薬の反応性を亢進させる。なかでもドパミン感受性、特にD2受容体反応性がEGFの乳幼仔期投与によって変動することが判明した。 2)遺伝子改変動物やサイトカイン投与動物のストレス耐久能を行動テストで評価、分析する。 IL-1投与動物を中心に拘束ストレスに対する反応性を対照群と比較した。拘束後の驚愕反応がIL-1投与で上昇しており、、炎症性サイトカインとストレス反応には相互作用があることが判明した。 3)DNAチップ解析等で得られた精神疾患における脳内遺伝子発現パターンと遺伝子改変動物やサイトカイン投与動物における脳内遺伝子発現パターンを比較、分析する。 サイトカインモデルの脳よりRNAを抽出して、GENEチップを用いて遺伝子発現プロファイルを実施した。,EGF投与群線条体では145遺伝子が2倍以上の変化を、IL-1投与群では77遺伝子がその変化を示したが、大半は未同定の未知遺伝子であり、統合失調症患者のデータとは一致を見なかった。 4)得られた各種サイトカインによる動物脳機能画像についてヒト精神疾患での報告と比較対比する。 免疫組織化学的手法によりリン酸化ERK蛋白やリン酸化CREBの脳内分布を検討したところ、背側部線条体においてD2アゴニストへの反応性が亢進していることが確認できた。 5)遺伝子改変動物やサイトカイン投与動物の脳活動異常部位に対して、電気生理学的に脳内活動のレコーディングを行ない、脳機能画像解析結果の裏づけを取る。 乳仔期EGF投与ラットは、中脳ドパミン神経のグルタミン酸感受性が亢進していることがパッチクランプ法により証明された。このことはドパミン神経路の標的部位、線条体でその感受性が変化していることと合致した。 6)これまでのデータ整理を行うと共に、研究の取りまとめを実施する。 上記の結果は、炎症性サイトカインは脳内ドパミン系を改変することで、ストレス反応を持続的に修飾することが示唆された。
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Research Products
(10 results)