2014 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアゲノムの比較解析に基づくハクロビア生物群の系統進化の解明
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13J00789
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西村 祐貴 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリアゲノム / ハクロビア生物群 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの分子系統解析の研究から、光合成性真核微生物であるクリプト藻類とハプト藻類、従属栄養性生物であるカタブレファリス類、テロネマ類、ゴニオモナス類、有中心粒太陽虫類、パルピトモナス類など多様な生物群がハクロビアと呼ばれる一つの系統群にまとめられるかどうかは議論を呼んでいる。本研究ではハクロビアに属するとされる系統群からそれぞれ複数種についてミトコンドリアDNA(mtDNA)の塩基配列を決定し、系統解析や比較ゲノム解析を行うことによりハクロビア仮説を検証することを目的としている。 平成26年度は平成25年度に続きカタブレファリス類Roombia sp.とパルピトモナス類Palpitomonas bilixのmtDNAを配列決定、およびゲノム構造を決定することに力を入れた。Roombia sp.のゲノムDNAからCsClを用いた超遠心によりmtDNAを精製し、次世代シーケンサー(NGS)であるHi seqを用いて配列決定を行った。得られたNGSデータから合計176kbに及ぶ4つのmtDNA断片が復元に成功した。これらの断片はmtDNAとしては異例なことに大量のイントロンや散在反復配列が含まれていた。 Palpitomonas bilixについてもNGSによるmtDNAの決定を行った。Hi seqから得られたデータをアセンブリし、そのデータを元にPCRを行った結果、約15kbのシングルコピー領域の両端におよそ30kbのInverted repeatsが隣接した特異なゲノム構造が推測された。さらにパルスフィールド電気泳動とDIGプローブによるmtDNAの検出を組み合わせて用いることで、P. bilixのmtDNAが線状構造であることを明らかにした。 更に共同研究者から未記載種の有中心粒太陽虫も取得して培養を開始し、抽出したDNAをNGSに供したので、平成27年度に詳細な解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサー(NGS)を用いることで、ハクロビアに属するカタブレファリス類Roombia sp.とパルピトモナス類Palpitomonas bilixのミトコンドリアゲノム(mtDNA)配列決定が大幅に進行した。Roombia sp.のmtDNAは完全決定には至っていないが、現在までに同定されたタンパク質遺伝子やRNA遺伝子の種類と数は、既知のクリプト藻類にコードされている遺伝子と比較してほとんど相違がない。このことから、Roombia sp.のコード領域はほぼ配列決定が終了していると考えられる。 P. bilixのmtDNA配列はNGSデータから、76kbの線状ゲノムとして復元された。この線状ゲノムは約15kbの単一コピー領域の両端に、約30kbのInverted repeatsが接しているという極めて特殊な構造であった。P. bilixのmtDNAが線状構造であることは、制限酵素処理したゲノムDNAを電気泳動し、mtDNA断片をサザンハイブリダイゼーションで検出することによっても確かめられた。 また、新たに入手した未記載種の有中心粒太陽虫の株についても抽出したゲノムDNAをNGSに供することができたので、平成27年度に解析予定である。 このように、最終目的であるmtDNAを用いたハクロビア仮説の検証に向けて、着実にデータが蓄積しつつあるので、順調に研究が進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きカタブレファリス類Roombia sp.のmtDNA配列決定およびゲノム構造決定に取り組む。次世代シーケンサー(NGS)を使用したにもかかわらず、mtDNA配列が完全決定に至らないのは、繰り返し配列やイントロンのためだと考えられる。したがって、パルスフィールドゲル電気泳動とサザンハイブリダイゼーションを組み合わせ、ゲノムサイズ・構造を推測する必要があると考えられる。 未記載種の有中心粒太陽虫については、まずNGSから出力されるfastqファイルをアセンブルし、得られたデータからblastによる相同性探索によりmtDNAコンティグを同定する。その後、必要であればPCRによりmtDNAコンティグ間を増幅し、サンガー法によって配列決定を行うことで、mtDNAの完全配列取得を目指す。 ハクロビア仮説を検証するために、上述の実験で得られたデータを加味した上で、真核生物内でmtDNAに広く保存されている遺伝子を用いて分子系統解析を行う。
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Research Products
(6 results)