2013 Fiscal Year Annual Research Report
有酸素性運動が動脈伸展性を増大させる機序の解明 : 抗老化因子Klothoに着目して
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13J01001
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松原 朋子 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Klotho / 動脈伸展性 / 有酸素性運動 / 中高齢女性 |
Research Abstract |
加齢により, 動脈伸展性は低下するが, 動脈伸展性の低下は心血管疾患のリスクファクターとなる。一方, 習慣的な有酸素性運動により, 中心動脈伸展性は増大するが, その改善メカニズムは明らかにされていない。中心動脈伸展性の改善メカニズムの解明は, 心血管疾患の予防の観点から, 非常に重要な課題である。本研究は, 習慣的な有酸素性運動による中心動脈伸展性の改善メカニズムを解明することを目的として, 血管保護作用を持つ抗老化因子Klothoに着目して検討を行った。まず, 血中Klotho濃度と中心動脈伸展性および有酸素性運動能力の関係を明らかにするために, 閉経後中高齢女性における横断的検討を行った。閉経後中高齢女性において, 血中Klotho濃度は動脈伸展性および有酸素性運動能力と有意な相関が認められた。したがって, 血中Klotho濃度は動脈伸展性および有酸素性運動能力と関連することが示された。次に, 有酸素性運動が中心動脈伸展性と血中Klotho濃度に及ぼす影響を明らかにするために, 縦断的検討を行った。閉経後中高齢女性において, 12週間の有酸素性運動介入を行い, 介入前後に, 血中Klotho濃度および動脈伸展性を評価した。12週間の有酸素性運動介入後, 血中Klotho濃度と動脈伸展性は増大した。さらに, その変化率に有意な相関が認められた。これらのことから, 中高齢女性における習慣的な有酸素性運動による動脈伸展性の増大メカニズムに血中Klotho濃度の増大が関与している可能性が示唆された。Klothoは様々な血管保護作用を持つことから, 中心動脈伸展性の改善メカニズムに広く働いていることが考えられる。Klothを介した中心動脈伸展性の改善メカニズムを調べることで, メカニズムの全体像を捉えることが出来れば, 心血管疾患の予防を考える上で重要な意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は, 習慣的な有酸素性運動が動脈伸展性を改善するメカニズムへの抗老化因子Klothoの関連を明らかにすることを目的として, 中高齢女性を対象とした横断的検討および縦断的検討を行った。横断的検討から, 中高齢女性において血中Klotho濃度が動脈伸展性および有酸素性運動能力と関連があることを明らかにした。また, 縦断的検討から, 習慣的な有酸素性運動が動脈伸展性を改善するメカニズムに血中Klotho濃度の増大が関与する可能性を示唆した。さらに, これらの成果を学会発表および学術論文として公表した。以上のことから, 当初の計画通りに研究は進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では, Klothoノックアウトマウスを用いて, 運動による動脈伸展性改善へのKlotho欠損の影響を調べる予定であった。しかし, Klothoノックアウトマウスの寿命は短く, 十分な運動介入期間が確保できないと考えられる。そのため, 今後は動脈石灰化モデルラットを用いて, 運動による動脈石灰化改善時に組織におけるKlotho発現を調べることで, 運動による血中Klothoの増大がどのように調節されているかを明らかにするための実験を行う。
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