2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
初鳥 匡成 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ボルツマン方程式 / 気体分子運動論 / すべり流 / クヌーセン数 / 希薄気体 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ流路などの微小系の気体流の振舞は,系の代表長が短く気体分子の平均自由行程に比べて無視できないため,通常の巨視的流体力学では正確に記述できない.しかし,この場合にも,分子気体力学のボルツマン方程式の系統的漸近展開に基づいた一般すべり流理論により,微小系の気体流の多くは通常の流体力学を適切に補正することで扱えることが知られている.一般すべり流理論によると,気体の振舞は大域的には流体力学的に記述でき,境界近傍の薄い層(クヌーセン層)で補正が必要になる.このクヌーセン層補正の具体的な値は,層の構造を規定する線形化ボルツマン方程式の空間1次元の要素半無限問題を解くことで決まる. 一般すべり流理論は,クヌーセン数(平均自由行程と代表長の比)の2次まで構築されているが,ほとんどの2次クヌーセン層補正の具体的な値はボルツマン方程式のBGKモデル方程式以外では得られていない. 2次クヌーセン層の要素問題は数理的に微妙で複雑な問題を含んでおり従来の直接差分による解法では適切な計算が難しい.
今年度は,この前年度に構築した新解法を元にデータを収集した.まず,未知であった2次クヌーセン層補正のうち,境界の曲率効果に関係しないものについて,解の微妙な振舞いも含めて精密に計算できていることを確認した.その結果をまとめた論文が現在査読審査中である.次に,前年度に構築した解法をさらに深化させ,解の特異性が著しい境界の曲率効果に関係する補正について,解の特異性を抽出して数値的に安全に計算できる方法を開発した.そして,その解法を用いて解が精密に計算できていることを確認した.これにより,一般すべり流理論で必要となるクヌーセン層補正が本来のボルツマン方程式の場合に完備された.現在,その結果をまとめた論文を準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度において,本研究課題の中核である2次クヌーセン層補正の求解を完了できた.クヌーセン層補正の特異な構造のため,計算方法の開発には予想以上の時間を費やした.しかし,結果的には非常に精度の高い数値解を得ることができ,満足している.これで,一般すべり流理論で必要になるデータが本来のボルツマン方程式の場合に完備されたことになる.この成果は,最終年度の研究の土台と研究総括の基礎として十分なものである.
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Strategy for Future Research Activity |
全体の研究計画を大きく変更する必要はないと考えている.まず,今年度の2次クヌーセン層補正の計算の成果をまとめ,流体力学に関する国際学術誌に投稿する.次に,すべり流理論の応用に取り組む.また,これまでの研究ですべり流領域では気体の圧縮性の効果が重要であることが分かってきたため,当初の計画には含まれていなかったが,より圧縮性の強い波動現象等をターゲットにしたすべり流理論の研究にも取り組みたい.
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Research Products
(4 results)