2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01146
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小笠原 敦 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フレーバー対称性 / レプトン混合 / クオーク混合 / 超対称性 |
Research Abstract |
当該年度では、超対称性とともに、標準模型を超えた物理候補と考えられているフレーバー対称性に着目して研究を行った。超対称性とフレーバー対称性を両方持つ模型を考えることで超対称の破れから生じる現象論的な性質の幅が拡がるため、今後の現実的な超対称性模型構築のために重要な研究である。 これまでフレーバー対称性は主に、レプトン世代間混合を説明するために研究されてきた。特に、tri-bimaximalと呼ばれる構造のレプトン混合がニュートリノ振動実験の結果を良く再現したため、その構造を出すフレーバー対称性が活発に研究されてきた。しかし近年の実験により、レプトン混合がtri-bimaximal構造から比較的大きくズレていることが判明した。このズレを説明することは一般的に難しいため、実験値にさらに近いレプトン混合を出す新しいフレーバー対称性を採用する方針で、これまでいくつかの研究がなされている。 新しいフレーバー対称性を探す手法としてHernandez-Smirnovは、フレーバー対称性模型が持つ必要条件から、その対称性から導かれるレプトン混合を求める手法を提案した。彼らの手法を適用すれば、模型に依存することなく、望まれるレプトン混合を導くフレーバー対称性を探索することが可能となる。 一方で、クオーク混合は標準模型の枠組みで記述される性質であるが、それがどの程度表れるかは標準模型では分からない。クオーク混合もフレーバー対称性から導かれる可能性があるが、詳しいことは分かっていないのが現状である。そこで我々は、Hernandez-Smirnovの手法を拡張し、CKM行列を調べる手法を確立した。そして、ある条件下で得られるCKM行列の模様を網羅することに成功した。この結果は、望まれるフレーバー対称性が持つ構造を多く示唆しており、これらの計算結果をもとに、CKM行列とPMNS行列を両方同時に実現可能な新しい対称性を提案した。 これらの研究成果で得られた構造は、今後の超対称性模型等に組み込まれることが期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では超対称性の破れのみに着目して研究を行う予定だったが、対称性の破れの性質についての研究が、フレーバー対称性の破れについても成功した点は計画以上であった。そして、フレーバー対称性を探索することで、今後の超対称性模型に導入するべきフレーバー対称性に対する重要な示唆を得られたため、当初の研究の目的に新しい側面から近づくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策として、今回の研究で得られた結果をもとに、模型に使えるフレーバー対称性を探し、それを基に具体的に超対称性模型を構築する。しかし、フレーバー対称性を含む現実的な超対称性模型構築のためには、未だ多くの問題が残されている。まずは、フレーバー対称性でどこまでレプトン混合・クオーク混合の実験値に近づけるかが未だはっきりしていないため、それをさらに詳細に調べる必要がある。また模型構築の際には、フレーバー対称性の破れのメカニズムを考案する必要があるが、模型に依存する部分が多く複雑であるため研究が必要である。そして、このようにして構築された模型から、ダークマターなどの未知の現象を説明する試みを行う予定である。
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Research Products
(2 results)