2013 Fiscal Year Annual Research Report
オランウータンにおける自己運動の認知とその認知特性に関する実験心理学的研究
Project/Area Number |
13J01359
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
花塚 優貴 中央大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | オランウータン / 自己認知 / 選好注視法 |
Research Abstract |
本研究ではオランウータンの自己運動の認知とその認知特性について選好注視法を用いて明らかにすることを目的とする。自己運動の認知という研究テーマは、ヒトに特有と考えられてきた自己認知を考える上で重要な課題の一つである。ヒトに近縁なチンパンジーも鏡に映った像が自己のものと認知できることから、自己認知はヒトに限った能力ではないことが明らかにされてきた。本研究で対象とするオランウータンもヒトに近縁な種であるが、その認知特性まで踏み込んだ研究はこれまでなされてこなかった。本研究で提供されるオランウータンの自己運動に関する知見は、ヒトの幼児の知見と直接比較できることから、ヒトの自己認知の進化的な起源の解明に寄与できると考えられる。 本年度はオランウータンに自己運動像を呈示するための実験デザインを確立することを目標とした。まずオランウータンの寝部屋の内側にiPadを設置するためのプロテクターを開発した。このプロテクターを用いてiPadの鏡アプリを起動し、オランウータンに呈示した。対象としたオランウータンは東京都多摩動物公園にて飼育されていたボルネオオランウータン5頭と名古屋市東山動物園にて飼育されていたスマトラオランウータン3頭であった。結果、一部のオランウータンにおいては鏡アプリを注視し、自己運動像を記録することができた。しかし多くの個体はiPadに接近するあまり、カメラの枠にオランウータンの像を捉えることが難しかった。このことからオランウータンの自己運動像を記録・呈示するためには、格子に設置するデザインよりも格子から一定の距離を離して呈示するデザインのほうが適切であることが判明した。したがって今後はiPadではなく、モニタを用いた実験デザインに切り替える必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
査読付きの専門学術誌への投稿(1本は発刊済み、1本は発刊予定)が2本あり、研究成果の発表は想定以王に進んだ。一方実験計画の実施については、予定していた実験計画(刺激の呈示方法)を一部変更する必要性があることが判明した。しかし対処法については既に目処は立っており、修正後の手法であれば、データを収集できることが十分期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
オランウータンに自己運動像を呈示する方法として、寝部屋の外側約60cmの場所にノートパソコンを設置するデザインに変更する。第1実験ではオランウータンが自己運動の認知ができるかどうか検討する。続く第2、第3実験ではヒトの幼児において自己運動の認知を阻害すると言われている左右反転条件、遅延呈示条件を設定し、オランウータンの自己運動の認知特性について明らかにする。
|
Research Products
(5 results)