2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01388
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
安部 祥太 青山学院大学, 法学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 刑事訴訟法 / 被疑者取調べ / 録音・録画(可視化) / 韓国 / 黙秘権 / 実質証拠 / 法と心理学 / 捜査法 |
Research Abstract |
本研究は, 日韓の被疑者取調べにおけるアメリカ法の継受と変容に関するものである。2013年度の主たる研究状況は, 下記の通りである。 (1)被疑者取調べの録音・録画(いわゆる可視化)の目的や意義・限界等を明らかにすべく, 先行研究が少ない「録音・録画記録媒体の証拠法的取扱い」について検討した。具体的には, 日本における議論状況及び裁判例を整理した上で, 韓国における議論や裁判例及び心理学の知見を踏まえた検討を行い, 取調べ録音・録画は極めて重要かつ必要不可欠ではあるものの, 必要以上にこれを過大評価してはならないこと等を指摘した(安部祥太「被疑者取調べの録音・録画と記録媒体の証拠法的取扱い」青山ローフォーラム3巻1号(2014年5月発刊予定)印刷中・掲載頁未定)。 また, 平成23年度科研費補助金(新学術領域)「法と人間科学」可視化の制度構築と裁判員裁判班(指宿信・成城大学教授)の後援を受けた「被疑者取調べ録画研究会」第14回研究会(2013年12月6日, 於・京都弁護士会)で招待講師を務め, 上記テーマを含む韓国の被疑者取調べ事情について報告を行った。 (2)法制審特別部会で被害者保護の一つとして議論されている, 被害者供述を録音・録画した記録媒体の使用方法について, 韓国憲法裁判所決定を紹介するとともに, 日本の議論との関係を解説した(安部祥太「性犯罪被害児童等の公判廷供述に代えて捜査段階供述を録音・録画した記録媒体を『信頼関係にある者』の証言により証拠採用することを認めた児童等性保護法と『公正な裁判を受ける権利』」青山ローフォーラム3巻1号(2014年5月発刊予定)印刷中・掲載頁未定)。 (3)本研究の主たるテーマと密接に関連する, 日韓の被疑者取調べにおけるアメリカ法の継受と変容に関する研究状況等は, 後述する「現在までの達成度」及び「今後の研究の推進方策」の通りである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は, 主に録音・録画記録媒体の刑事証拠法上の取扱いについて, 心理学等の知見を踏まえて検討し, その結果, 録音・録画制度の意義・位置づけ及び限界を展望する等, 制度設計等に資する研究を行うことができた。また, 夏季に科研費補助金で韓国・高麗大を訪れ, 日本では収集が極めて困難な韓国刑事訴訟法に関する論文・書籍等を入手することができた。 他方で, 被疑者取調べの研究を行う上でより根本的な問題である黙秘権・弁護権等の理論的検討は, 必ずしも充分ではなかった。また, アメリカ法の影響等に関する検討は, 発表に耐え得る水準まで高めることができなかった。 以上のことから, 現在までの達成度は, 「当初の計画以上」であるとは言い難いものの, ②おおむね順調に進展していると言って良い状況であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は, 日韓両国の被疑者取調べにおけるアメリカ法の影響について検討する予定である。 被疑者取調べにおけるアメリカ法の影響は, 「事前規制」としての権利保障・各施策の実施と, 「事後規制」としての自白法則に分類することができる。これらについて, 先行研究を踏まえ, アメリカにおけるMiranda判決前後の取調べ規制原理を整理する。その上で, 日韓両国におけるその受容と変容の差異及びその理由を明らかにするために, Miranda判決が示された1966年を境として, 日韓両国の取調べ規制原理がどのように変化したか(変化しなかったか)を比較する。これにより, アメリカにおける憲法的刑事訴訟観に基づいた被疑者取調べの憲法的規制について展望する。 また, 日米韓三国の憲法は, いずれも, 黙秘権や弁護人の援助を受ける権利等, 被疑者の諸権利を充分に保障することを要求していることから, 各権利の具体的な意義や原理等についても比較研究を行う予定である。
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Research Products
(4 results)