2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における台湾原住民への認識-日本統治期の台湾文学を中心に-
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13J01692
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
簡 中昊 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 台湾原住民 / 探検 / 佐藤春夫 / 魔鳥 / 霧社 / 生蕃 |
Research Abstract |
本研究は日本統治期の台湾文学を中心に、近代日本における台湾原住民への認識を解明したいものである。本年度ではまず台湾原住民統治の時代的背景を理解するため、「日本の近代性」、「アイヌ、琉球、台湾原住民」に関わる研究書を収集して精読し、今までの北海道・沖縄研究を考察することによって、近代日本の植民地理論、先住民統治政策及びそれに体現された近代性への理解を得た。前述の作業によって近代日本の「土人」意識およびその意識における台湾原住民の位置づけを考察した。台湾原住民に対する認識は独立的ではなく、帝国におけるほかの植民地の先住民への認識と関連・相続しているものであり、「土人」意識の一部でもあるという認識を得た。 そして、本年度では日本統治初期の渡台警察官と作家の作品を分析し、統治初期における台湾原住民への認識を定位することに努めた。統治初期の台湾原住民に関する記録は、おおむね警察官の公文書と研究者の研究書であるが、日本人警察官・中島竹窩「生蕃探険記」は珍しい文学的記述として雑誌『太陽』で連載され、後に少年叢書として出版されたものである。探険記は台湾原住民を近代日本の「文明の優位性」を証明する「他者」であるという官製的観点を「内地」読者に伝えたが、その記述はすべて真実話ではなく、かえって当時の原住民認識に合わせるための「作り話」もある。一方、最初の渡台日本人作家とも言える佐藤春夫は作品「魔鳥」と「霧社」に台湾原住民を描いたが、彼の目的は原住民そのものではなく、原住民の統治問題を借りて、近代日本の文明批評・植民地問題を指摘しようとするのであった。結局、統治初期の台湾原住民に関する文学的記述は原住民そのものへの関心という目的で書かれたものではない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「土人」意識及びその意識における台湾原住民の位置づけについて、補足したい部分があるが、日本統治初期の警察官・作家による台湾原住民像に対する基本的理解を得た。 おおむね予想のとおり進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度では歴史書・日本人作家による台湾原住民関連作品を多く読む予定である。 とくに、1930年の霧社事件は近代日本の台湾原住民認識を大きく変え、その歴史的背景を把握することが重要であるため、沖縄大学の又吉盛清教授のフィールドワーク学習会を参加する予定である。
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Research Products
(3 results)