2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J01732
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷岡 謙 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 階層帰属意識 / 社会移動 / SSP調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、階層認知メカニズムの解明と一般化を行い、日本の相対的特徴を明らかにすることである。 具体的には、以下の2つの研究を遂行している。 【研究1】社会学・社会心理学の文献研究から理論的・計量的なモデルを構築し、大規模社会調査データ(SSM調査、SSP調査)の時点間比較を行い、階層認知メカニズムの解明を目指す。具体的には、細分化された階層認知や人びとが身近な他者との比較を通じて作り上げる階層イメージをモデルに導入することを考えている。2015年に行われる予定であるSSP調査データでこのモデルを検討する。 【研究2】World Value Surveyといった海外の大規模社会調査データの比較分析を行い、研究1で明らかとなった階層認知メカニズムが海外で適用可能か検討し、メカニズムの一般化を行う。また、国際比較を通じて、日本における階層認知メカニズムの相対的特徴を明らかにする。 平成26年度は、【研究1】については、まず4月に行われた第4回SSPプロジェクト全体会議において発表を行った。この研究をさらに発展させた論文を『年報人間科学』において合名論文として発表している。この論文では、主観的社会移動という変数を用いて、客観的な移動と階層帰属意識の関連を検討した。分析の結果、上昇移動者は高階層継承者と比べて階層帰属意識が低くなるという直接効果が確認された。その一方で、上昇移動者は高階層継承者と比べて主観的に上昇したと感じる傾向があり、そのように考えることが階層帰属意識を高めるという間接効果も確認された。この直接効果は先行研究でも指摘されていたものだが、間接効果の方は今回新たに発見した重要な知見である。 【研究2】については、サンフランシスコで開催された第109回アメリカ社会学会に参加し情報収集を行った。また、実際にWVSやGSSのデータをダウンロードし、計量的な分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第4回SSPプロジェクト全体会議において発表を行った。これは2名の共同発表であり、研究代表者(谷岡)の役割は大きい。報告知見に対して他の研究者からも好評を得たため、この研究をさらに発展させた論文を『年報人間科学』において合名論文として発表している。その他にもSSPプロジェクトや2015年社会階層と社会移動調査研究会といった大型科研の調査に院生メンバーとして参加している。特にSSPプロジェクトでは、監査調査員として兵庫県・愛知県・熊本県と広範囲に渡って活動し、高いスキルを活かし大きな成果を上げている。また、その他の学術論文を執筆しており、近いうちに投稿する見込みである。よって、この研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
SSPやSSMといった大規模社会調査プロジェクトに参加しながら、それらのデータを用いて分析を進めていく。また東大社研のパネル調査データや、アメリカの大規模調査であるGSSのパネル調査データを用いた分析を行い、計量的なメカニズムの解明を目指す。
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