2013 Fiscal Year Annual Research Report
大戦期ポルトガルにおけるエリアーデの宗教学的営為に関する研究
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13J02116
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥山 史亮 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | エリアーデ / 宗教学 / 亡命者 / ポルトガル / ソヴィエト / 宗教文化 / 移民 / 共産主義 |
Research Abstract |
エリアーデの宗教学的営為に関する調査として日本宗教学会、宗教倫理学会に参加し、情報収集を行なった。また、北海道大学、ブカレスト大学で必要な基本資料を複写収集し、内容の分析と整理を既に開始している。大戦期ポルトガルにおけるエリアーデの活動に関し、今年度は『棟梁マノーレ伝説に関する注解』、短編小説『巨人』、同郷の哲学者であるコンスタンティン・ノイカと交わした書簡等を資料として読解し、分析・整理を進めた。その結果、以下の新たな成果が得られた。 1. エリアーデがルーマニア独自の宗教文化と見なした民間伝承詩「棟梁マノーレ伝説」に関する研究は、ソヴィエトの侵攻に抗してルーマニアの文化的特性を存続させるという目的を強く帯びている。 2. エリアーデが大戦期に起草した短編小説『巨人』は、民間伝承詩「棟梁マノーレ伝説」の文学的表現であり、「棟梁マノーレ伝説」に関する研究と政治的目的を共有している。 3. ポルトガル期において、同郷の哲学者であり友人であったコンスタンティン・ノイカと共に議論していたルーマニアの文化をソヴィエトの侵攻から防衛するための構想は、フランスへの亡命後、モニカ・ロヴィネスクをはじめとするパリ在住の亡命者たちと協力することで実現されることになった。 以上の成果を日本宗教学会第72回学術大会や宗教倫理学会第14回学術大会、北海道基督教学会第52回学術大会等で発表するほか、奥山倫明監修・奥山史亮他訳『アルカイック宗教論集』(国書刊行会、2013年)に文献の翻訳と解題を掲載することで示した。さらに、『宗教学年報』(東京大学宗教学研究室)に研究論文として掲載されることが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ブカレスト大学等における資料収集が順調に進んだことにより、当初計画していた以上の情報を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究成果により、ソヴィエトの侵攻と支配からルーマニアの文化を防衛するというエリアーデの活動理念に対しては、モニカ・ロヴィネスクら亡命者だけでなく、コンスタンティン・ノイカをはじめとするルーマニア国内の反体制派の人間たちも数多く賛同し、支持していたことが明らかとなった。したがって今後の課題として、ポルトガル期におけるエリアーデの宗教学的営為の特徴と展開をさらに詳細に解明するためには、戦後のルーマニアにおける体制派および反体制派とのかかわりを視野に入れて研究を継続する必要性が判明した。
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Research Products
(5 results)