2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代インドにおける公共空間の再編: ムンバイの市民社会運動を事例に
Project/Area Number |
13J02321
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田口 陽子 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 市民社会 / 政治社会 / インド / ムンバイ / 中間層 / 市民意識 / 美学 / 人格 |
Research Abstract |
本年度は、9月から10月にインド、ムンバイで現地調査を行った。継続的な調査として、市民団体の活動家にインタビューを行い、活動内容を観察した。また、「市民社会」の言説と関連性の深い能力主義についての調査として、「心理測量テスト」のワークショップへ参加した。さらに、現地の研究者と面会し、意見交換を行った。 研究実績としては、ムンバイの美化運動と「市民意識(civic sense)」についての英語論文がContemporary South Asia誌に掲載された。インドの都市部における美化運動は、従来、経済成長と中間層の上昇志向を背景として批判的に議論されてきた。本論文では、ムンバイの美化キャンペーンの現地調査に基づいて、先行研究の議論に回収されえない、活動家を突き動かす独自の美学と教育学の在りようを提示した。 また、以下の口頭発表を通して、国内外の研究者と議論を深めた。 1. 社会人類学研究会(5月、首都大学東京) : ムンバイの市民と行政のパートナーシップ事業を事例として、市民の実践と語り口から、運動が自己の内部に向かっていくことを分析した。 2. 日本文化人類学会(6月、慶応大学) : ムンバイの市議会選挙を事例に、市民社会における代表性が、活動家たちによっていかに探求され、提示されているのかを報告した。 3. 国際人類学民族学会議(8月、マンチェスター大学) : ムンバイでは、これまでの「腐敗した」政党政治への不満から、「誠実な」市民候補者を市政に送ろうという運動が起きた。ムンバイ市議会の選挙運動を事例に、新しい「信頼」の基準を探求する人々の試みを分析した。 4. 「ポストコロニアル時代における都市のハイブリディティ」研究会(12月、マカオ大学) : インドの市民運動で重視されてきたる「サーベイ」と「意識を高める」という手法に注目し、自律的な個人としての「市民」と、統計の対象であり福祉の受益者である「人口」の狭間にある人々に対する実践を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初予定していた2件に加えて、もう1件、国際会議での発表を行った。国際的に活躍する研究者達との議論を通して、今後の研究課題が明確化した。現地調査と文敵調査も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画に沿って、インド、ムンバイでの現地調査と文献調査を行う。現地調査では、市民社会団体の活動家達への継続的なインタビューと、活動内容の観察を主な内容とする。文献調査では、政治学や歴史学を含めて、広く市民社会や公的領域についての検討を行う。また、国際学会への参加と発表、共同研究での議論を通して、多くの研究者との学術交流を行う。
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Research Products
(5 results)