2013 Fiscal Year Annual Research Report
ワニの温度依存的性決定における性分化関連遺伝子の発現制御と温度受容のメカニズム
Project/Area Number |
13J02329
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡 香織 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 性決定 / 核内受容体 / 温度 / 爬虫類 / 遺伝子発現調節 / 糖質コルチコイド |
Research Abstract |
ワニ類やカメ類の多くの種では、胚発生中の温度によって個体の性が決定する『温度依存的性決定』がみられる。他種で性分化に関わることが知られる遺伝子の発現時期などが調べられている一方で、その調節メカニズムや温度が性分化シグナルに変換される仕組みはわかっていない。本研究では温度依存的性決定の分子メカニズムの解明を目的として1、性分化関連遺伝子の転写調節機構2、温度を認識し応答する機構について解析を行っている。本年度は1に関して、(1)糖質コルチコイド受容体による抗ミュラー管ホルモン遺伝子の転写抑制機構の研究を進めた。糖質コルチコイド受容体が結合する配列を決定するため、プロモーターを短く削ったレポーターでアッセイを行い、結合が推定される50bpの領域を同定した。この領域の配列をもとにオリゴヌクレオチドを設計しゲルシフトアッセイに用いたところ、糖質コルチコイド受容体との直接的な結合が示唆された。今後、この配列に変異を導入し、転写抑制への寄与を検証していく。また、(2)アリル炭化水素受容体によるアロマターゼ遺伝子の転写活性化に関してはDNA結合能を欠損した変異型受容体を作製し実験を行った。しかし、転写活性化にDNA結合が必要とされるかどうか、明確な結果は得られていない。2については、魚類で糖質コルチコイドが温度依存的性決定に関与するという報告から着想を得て、カメの卵への糖質コルチコイド曝露実験を実施した。性分化後に生殖腺の組織学的解析を行った結果、一部の曝露個体で性転換が生じており、爬虫類の温度依存的性決定における同ホルモンの性決定・性分化への関与が示唆された。今後、温度変化に伴うホルモン量の変動やホルモン曝露による遺伝子発現の変化を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画と変更した点もあるものの、糖質コルチコイドシグナルによる温度依存的性決定の調節の可能性について、in vitroだけでなくin vivoでの解析を行えた。来年度につながる成果も得られたので概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、糖質コルチコイドシグナルによる性分化調節メカニズムの解明に重点を置く。ホルモン曝露実験の再試及び器官培養系を用いた実験を行い、とくにin vivoの知見を充実させる。アリル炭化水素受容体による転写調節機構については条件を検討し直し、性分化へ関与するかどうか精査する。
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Research Products
(2 results)