2014 Fiscal Year Annual Research Report
清末以降の博物館事業・清室財産・清朝復辟問題からみた満洲国の実相
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13J02361
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大出 尚子 北海道大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 満洲国 / 東三省博物館 / 奉天故宮博物館 / 古物陳列所 / 運京 / 清室財産 / 瀋陽故宮 / 旧植民地関係資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
東三省博物館~奉天故宮博物館期の瀋陽故宮および北京の古物陳列所を考察対象とし,博物館と清室財産管理・清朝復辟問題との関連を検討するという目的に沿って,本年度は以下の成果を挙げた。本年度は清末~中華民国期の金梁の事跡,金梁と清室財産としての瀋陽故宮の関係,および瀋陽故宮を保全する立場にあった時期に通底していた思想を復元することを研究計画に挙げた。それについては,金梁が,瀋陽故宮とその文物を積極的に管理・保存・展覧することで清朝皇帝権力の象徴としての価値を維持し,清朝再興と結びつけようとする構想を抱き,故宮という場そのものが清朝復辟活動の拠点となる可能性をはらむものとして存在していたことを明らかにした。そして,その成果を北海道大学東洋史談話会「清室財産管理問題と金梁の文物保護策――東三省博物館~奉天故宮博物館期の瀋陽故宮と古物陳列所――」(口頭発表)にて公にした。 また,1913年~1914年,瀋陽故宮と熱河行宮の文物を北京の紫禁城に運搬した,いわゆる「運京」に注目し,「運京」を瀋陽故宮史上の一事件として捉え直し,古物陳列所成立前後の様相の変化,瀋陽を活動拠点とする金梁などの「運京」に対する反応を考察した。その成果は,社会文化史学会「瀋陽故宮と古物陳列所――文物の「運京」を中心に――」(口頭発表)にて公にした。さらに,昨年度出版した著書を通じて交流を持った東京学芸大学において開催されたフォーラム「帝国主義・植民地主義と博物館」のシンポジウムのパネリストとして招かれ,「「満洲国」の博物館事業」に関する講演を行った。その成果は来年度,書籍化される予定である。 「旧植民地関係資料」の調査は,旧高等商業学校である長崎大学において,10月1日~3日に実施した。特に戦前期,長崎高商から発行された出版物を中心に,「満洲国」期の文化事業に関わる資料を閲覧・収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目的に沿って,東三省博物館~奉天故宮博物館期の瀋陽故宮および北京の古物陳列所を考察対象とし,博物館と清室財産管理・清朝復辟問題の関連を検討した。そしてこれまでに,単著・共著・3度の口頭発表で得られた成果を公にした。 特に,古物陳列所の研究は,昨年度成立百周年を期に日中間において高まりを見せているが,本研究もその潮流に資するものとなっていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,1929年に開館した東三省博物館の活動方針・展示に,金梁の清室財産保全の思想がどのように反映されたのかを具体的に描出していく。そして1年目と2年目に得られた成果を踏まえ,複数の個別論文として公にすることを目指す。 また,1年目・2年目に引き続き,旧植民地関係資料の収集を行う。
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Research Products
(3 results)