2013 Fiscal Year Annual Research Report
小脳プルキンエ細胞樹状突起発生過程におけるミトコンドリアのダイナミクスと機能
Project/Area Number |
13J02523
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福光 甘斎 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ミトコンドリア / プルキンエ細胞 / アクチン / 樹状突起 / ATP / クレアチン |
Research Abstract |
本研究室では中枢神経神経細胞の中でも際だって複雑な樹状突起を持つ小脳プルキンエ細胞をモデルとし、複雑な分岐構造を形成・維持するメカニズムを明らかにする研究を行っている。これまでに神経細胞における主要なエネルギー生産の担い手であるミトコンドリアに着目し、その樹状突起における局在を調べたところ、ミトコンドリアは分岐点に局在しやすい傾向があることが分かり、さらに個々のミトコンドリアの動態を調べたところ、ミトコンドリアは積極的に細胞体から樹状突起へと運ばれ、分岐点で一時停止する傾向があることを見出した。これらのことから、局所ミトコンドリアは樹状突起形成に重要な役割を果たしていることが示唆されたが、局所ミトコンドリアが樹状突起形成のどの局面を制御しているのかや、その分子メカニズムについては明らかではなかった。そこで本研究では特異な局在パターンを示す樹状突起ミトコンドリアの生理学的意義を明らかにするために、TRAK2の機能欠損やミトコンドリアを人工的に自己凝集させることでミトコンドリアの樹状突起への輸送を阻害した。その結果、樹状突起におけるミトコンドリアの局在量が減少したのに伴い、樹状突起が倭小化した。FRETセンサーであるATeamを用いて樹状突起におけるATP量の検証を行った結果、ミトコンドリアの局在減少下では樹状突起局所ATP量に減少がみられた。さらに、ミトコンドリア量が減少した樹状突起先端においてアクチンの制御因子であるコフィリンの異常凝集体が観察された。以上より局所ミトコンドリアがアクチンを適切に制御することが正常な樹状突起形成に重要であることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的としていた、ATP下流での安定した樹状突起伸長の分子メカニズムやミトコンドリアの局在とATP分布との関係性などが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題推進課程において、細胞内のエネルギー量をクレアチンを処理することで向上させると、ミトコンドリア量の減少によって引き起こされる樹状突起の矮小化に顕著な回復がみられた。このことから、クレアチンを介したエネルギー生産を担うクレアチンキナーゼ自体も樹状突起形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。今後はクレアチンキナーゼを機能欠損させたときの樹状突起形成への影響やその分子メカニズムを明らかにしていく予定である。
|
Research Products
(2 results)