2013 Fiscal Year Annual Research Report
「ひきこもり」における親密な人間関係にかんする社会学的研究-当事者活動を事例に-
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13J02766
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
伊藤 康貴 関西学院大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ひきこもり / 当事者 / 親密性 / 自助グループ / 居場所 |
Research Abstract |
本研究は、「ひきこもり」の当事者が、人間関係や社会的ネットワークをいかにして形成しているのか、また形成していく際に、どのような困難が経験されているのかを記述・説明するものである。 現在の「ひきこもり」支援においては、かつて「ひきこもり」の状態を経験した人々が実際の支援現場においてもいわゆる「ピアサポーター」として支援に携わるようになっている。しかし、そもそもこのような「ひきこもり」のピアサポーターといったような支援(者)が、社会学的あるいは当事者学的に見てどのような意味を持つのかはいまだ解明されていない。また現状の「ひきこもり」の当事者としての活動は、自助グループやアウトリーチ活動といった(狭義の)支援活動にとどまらず、社会一般に向けた執筆活動や講演、フユーチャーセッションや「ひきこもり大学」(当事者・経験者を講師に見立てた知識伝達・共有の試み)といった具合に広く一般社会に開かれており、ある種の市民活動や社会運動として展開されている。ゆえに、「ひきこもりピアサポーター」というような当事者としての支援(者)をただの支援実践として捉えるだけではなく、その活動を社会における一つの活動として捉え、その社会性や政治性について社会学的かつ当事者学的に考察することは、「ひきこもり」の支援に寄与するのみならず、いわゆる当事者としての市民活動や社会運動を分析する際にも大きな手掛かりとなりうる。 このような問題意識のもと、平成25年度は、おもに兵庫県内の「ひきこもり」の自助グループや「居場所」の運営にもかかわりながら、研究にかかわるフィールドワークやインタビューを実行した。毎週、複数の当事者や家族とかかわりながら、その場を社会的に記述するためデータを収集した。また、ごく最近は、自らを「ひきこもり」の当事者として名乗りながら支援活動を展開している人々が全国に点在するようになったため、兵庫県内にとどまらず、大阪や京都、九州、四国、関東でのひきこもり支援現場にも毎月赴き、おもに当事者として支援活動にかかわっている人びとについて調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請時期では予想できなかったほどに当事者としての支援活動が現在非常に活発化しており、データの収集に非常に手間取っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
データの収集と分析をすすめ、論文の執筆や学会発表を通した研究成果の公開を行う。特に実際のフィールドで起きていることを把握することは、今後の共同研究や質問紙調査を実施するにあたって必要なことであるため、参与観察やインタビューを徹底することを意識する。 なお、特別研究員奨励費は優れた研究者の育成を主目的としており、かつ博士課程後期課程の大学院生は博士論文の完成を主目標としている以上、本研究課題は優れた博士論文の執筆に資するものでなければならないと思われる。ゆえに今後はより博士論文の完成を意識して研究を遂行する。
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Research Products
(4 results)