2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子化石を用いた白亜紀海洋無酸素事変期における海洋環境変動と生態系応答の解明
Project/Area Number |
13J02814
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安藤 卓人 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 白亜紀温暖期 / 海洋無酸素事変 / アクリターク / 渦鞭毛藻 / 三芳香環ステラン / アリルイソプレノイド |
Research Abstract |
本研究の目的は, 北海道(太平洋)と南東フランス(古テチス海)の白亜紀海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Events ; OAEs)相当層準堆積岩のバイオマーカー(分子化石)およびケロジェン分析から海洋環境変動の復元と生態系応答の評価を行うことにある。今年度は主に南東フランス・ボコンティアン堆積盆におけるOAE層準堆積岩の分析を行ない, 10月上旬には南東フランスMoriezなどの地域でフィールド調査を行なった。まず, 蛍光顕微鏡を用いたケロジェン分析を詳細に行ない, 白亜紀では記載例が少ない微小有機質化石(アクリターク)の記載法と蛍光特性を利用した海成・陸成有機物の組成比の分析手法を改良した。その方法により, 微小なアクリタークや不定形の海成有機物がOAE堆積岩中には多く堆積したことが明らかになった。また, 堆積岩中の三芳香環ステランを用いて渦鞭毛藻と円石藻の各々の生産性指標を新たに提案し, その有用性をOAE相当層準の堆積岩試料の分析から検討した。これによって, OAE1bとOAE2の期間には渦鞭毛藻生産がおもな基礎生産を担うことが分かった。また, OAE1a~OAE2の約4千万年間の大まかな渦鞭毛藻と円石藻の生産変動と海洋基礎生産への寄与率の変動について復元し, 白亜紀中期の温暖期での両藻類の進化についての新たな知見を得た。さらに, OAE1b期の堆積岩の特殊なアリルイソプレノイドの詳細な分析から, 従来考えられている古細菌が有機物生産を活発に行っていたという「アーキアの海」仮説を再考し, 未同定の真核藻類のブルームが大きく寄与した可能性を新たに示した。以上の3つの研究成果はOAE発生時の基礎生産者を議論する上で重要な成果であり, 今後の地球温暖化に対する海洋基礎生産者の応答や化石燃料の元となった有機物を生成した基礎生産者を理解する上でも重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初は本年度中に北海道の白亜系試料を用いてフランスの試料との比較を行ない, 学会等で公表をする予定であったが, 実際にはフランスの試料におけるデータの再検討と解釈に念頭をおいたため, 北海道の試料については現在分析が終了した段階であり, 具体的な比較をすることはできなかった。しかしながら, フランスOAE層準の追加分析によって今後の研究に更なる発展性が見受けられため, ②とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後, OAE2相当層準について北海道とフランスの両セクションについて分子化石およびケロシェン分析の比較を行なっていく予定である。北海道のセクジョンについては更に, フランスのOAE1b・Leenhardt層準とOAE1d・Breistroffer層準と対比が可能であると考えられるが, 現在試料が存在しないため来年度以降に採集する必要がある。また, ケロジェン分析については現状は顕微鏡観察が主体であるが, 熱分解や化学減成法を用いてその高分子構造を解明することで詳細な研究が期待されるので, 分析手法の開発も行なう。
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Research Products
(8 results)